復讐の始まり
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、ヴェイズと名乗った。
もう1人は、背丈が私と同じくらい小柄な、少女だった。
彼女は自分では名乗らず、ヴェイズが紹介した。
フェアルス・クローティス。現在のベスフル国王の娘であり、お姫様だった。
その言葉に、スキルドとシルフィは驚いたようだったが、私の中の驚きはそれ以上だったと思う。
クローティス。私達と同じ姓。
現ベスフル国王は、私達の叔父にあたる人だと聞いていた。
つまり、目の前の彼女は、私達と従姉妹の関係にあった。
兄に特に動揺は見えない。事前に聞いていただけなのかもしれないが、ベスフル王宮の人間を助けようとする兄を、私は意外に思った。
兄が、両親のことで、王宮の人間を残らず恨んでいると思っていたからだ。
「ベスフルの本城が敵の襲撃を受けたんだと。姫様を砦まで逃がすために、脱出してきたそうだ」
兄がそう説明した。
「姫を無事に砦に送り届けられたら、できる限りの報酬はお支払する」
よろしく頼む、とヴェイズが頭を下げた。
「姫様とは他人じゃないんだ。任せてくれ」
兄のそのセリフは、既に彼らに身分を明かしていることを示していた。
兄の考えがよくわからなかった。
私には、母の母国を助けたいなどという動機で兄が動いているとは思えず、真意は別にあるのだろうと考えてしまった。
「わかったわ、出発しましょ」
シルフィが兄の手を取った。
「……街で待っていろと言ったはずだが?」
「やだ、私も付いてく! この先の街だって、いつ戦火が及ぶかわかんないし、ヴィレントが守ってくれなきゃ、安心できない!」
シルフィが兄に腕を絡めながら、唇を尖らせた。
この人のこういうところが、私は嫌だった。
兄の方も、それを怒鳴るでも振りほどくでもなく、ただ迷惑そうにため息をつくだけだった。
私が口答えした時は、殴り飛ばしてたくせに……
私は2人から目をそらした。
「ヴィレント殿、時間が惜しい。すぐにでも出発したいのだが」
ヴェイズが急かした。
兄は軽く舌打ちすると、シルフィに向かって、
「わかった、好きにしろ。危なくなっても知らないからな」
「平気よ。ヴィレントが守ってくれるでしょ?」
兄は、再度大きなため息をつくと、諦めて歩き出した。
「すまん、ヴィレント。本当にヤバくなったら、俺がシルフィを街まで引っ張っていくから」
「えー、スキルドは来なくていいのに」
私もスキルドに手を引かれて歩き出す。
私達は、結局6人全員で、ベスフルの砦に向けて、出発した。
この出会いが、私達の運命を大きく動かしたことを、この時は、まだ誰も知らなかった。
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