復讐の始まり
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、わずかに緊張が見えたが、私のように、こちらに危害が及ぶ心配などはしていないようだった。
シルフィに至っては、安心しきった顔で、むしろ、どこか得意げな表情まで浮かべて、兄を見守っていた。
兄が一団と接触。この場所からは、話の内容までは聞き取れなかったが、相手が険悪に何かを叫んでいることはわかった。
そして遂に、兄が剣を抜いた。
いつも、兄は腰に剣を下げていたが、実際に抜いたところを私が見たのは、これが初めてだった。
私は、思わず、スキルドにしがみ付き、服を掴んだ。
一団は、囲まれていた2人組を無視して、一斉に兄に襲い掛かった。その数は、10人以上はいたはずだ。
兄は、襲い掛かる相手を次々と斬り伏せていった。
素人同然の私にも、兄が只者ではないことがわかった。
私は、スキルドにしがみ付きながらも、目を背けることはなく、むしろ、食い入るように見つめていた。
これが、兄さん……?
兄と相手の数人が剣を振り合い、すれ違うと、相手だけが倒れ、兄は何事もなく、続けて剣を振るう。
何人が襲い掛かっても、兄の動きが鈍ることはない。相手の数だけがどんどん減っていった。
男達は、遂に残り2人になると、かなわないとみて逃げ出した。
兄は、それらも逃がさない。1人を背中から斬りつけ、躓いて命乞いするもう1人も、あっさり斬り捨てた。
あっという間だった。
その時の兄は、まるで本当の悪魔のような、強さ、恐ろしさだった。
「……終わったみたいね」
得意げだったはずのシルフィまで、若干、ぽかんとした表情になっていた。
以前にスキルド達が言っていた、兄に助けられたという話、スキルドが兄に憧れているという話など、この時、私は初めて実感できた気がした。
こんな人に助けられたら、こんな強さに魅せられたら。
私も、あの地獄の5年間がなければ、素直に感嘆し、あるいは自慢の兄だと、誇っていたかもしれない。
兄さんを本気で怒らせたら、私など、きっと一瞬で殺される……。
兄を敵視していた私には、そんな恐怖の感情しか浮かんでいなかった。
「敵わないな。やっぱり、凄いよヴィレントは」
呟くスキルドも、驚きとも呆れともいえない表情をしていた。
「この2人を護衛する仕事を受けた。お前らは、街で待っていろ」
合流した直後、兄からそんな言葉が出た。
その姿は、髪が少々乱れているだけで、かすり傷一つ負っていない。
兄は、始めから謝礼が目当てだったのだろう。ついでに仕事まで受けられて、ちょうど良かったと思っているようだ。
兄に助けられた2人は、どちらもフードとマントで風貌を隠していた。
そのうちの1人、背の高い方は、そのシルエットから、中に鎧を着込んでいることがわかる。
彼は、ベスフル王国の近衛騎士
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