スキルドとシルフィ
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シルフィの存在が、兄の心を穏やかにしていたのだ。それは、私には、今も昔も、決してできなかったことだった。
2人と出会ったことで、私の生活は一変した。
暴力に怯える必要のない、穏やかな日々が、帰って来たのだ。
そのはずなのに、私の心には、大きなしこりが残ったままだった。
兄と2人で過ごした日々。私にとって、兄は、絵本の中で見た、災いを呼ぶ悪魔のような存在だった。
私は、悪魔に取り付かれた、かわいそうな女の子。
果てしなく続く、苦しみの日々。
でも、いつか王子様が現れて、悪魔を打ち倒し、私を救い出してくれる、そんなことを考えていた。
2人は確かに、私を苦しみから救ってくれた。
だけど、悪魔を打ち倒してはくれなかった。
それどころか、兄は悪魔なんかじゃないと、私に訴え続ける。
スキルドでさえも、私の前で、嬉しそうに、兄を称賛した。
彼は言った。ヴィレントは、恩人であり、憧れだと。
私は耳を塞ぎたくなった。
やめて。その人は悪魔なの。2人は、騙されているのよ。
兄が悪魔でないのなら、私の5年間も続いた苦しみは何だったのか。
あなたたちが褒め称えるその人に、苦しめられ続けた私はいったい何なのか。
なぜ、兄は、私以外を苦しめることがないのか。
それでは、まるで、私の方が悪魔のようじゃないか。
兄が、悪魔として裁かれなければ、私の世界は、私の価値観は、壊れてしまう。
だから、2人の言葉を、絶対に認めるわけにはいかなかった。
それでも、兄もスキルドもいない場所で、私は生きられない。
心にしこりを残したままでも、この生活を続けるしかなかった。
いつか、本当の救いが訪れると信じて。それが、どれほど身勝手な思考か、自覚することはなく、私は祈り続けていた。
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