スキルドとシルフィ
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いて、綺麗な人だったと思う。
そして、優しいスキルドと違い、思ったことはすぐに口に出す、きつい印象の人だった。
彼女と2人きりになった時に、言われたことがある。
「あなたさあ、なんで自分では働かないの?」
彼女もまた、兄達とともに働きに出ていた。
やっている仕事は兄達とは違うのだろうが、それでも、彼女は、自分自身の食べる分は、自分で稼いでいた。
「1人で外に出るのが心細いなら、私に付いてくれば? 色々、教えてあげてもいいし」
それは、彼女なりの善意だったのだろう。
だが、私は、他人と関わるのが怖かった。
幼いころから人見知りだった私は、そのまま、大きくなってしまった。
両親が死んだあの日から、私の時は、一歩も進んでいない、子供のままだった。
うつむくだけで、何も答えようとしない私に、
「ふぅん、あなたは、そうやって何もしないで、ずっと守られて生きてきたのね」
彼女は冷ややかに言った。
守られていた? そんなはずはない。私はいつも、兄の暴力に怯えていた。兄が私を傷つけたことはあっても、守ってくれたことなど、一度だってない。
兄さえいなければ、私はもっと幸せだったはずだ。
もし本当に兄がいなければ、自分がとっくに餓死していたことなど、その時の私は、考えもしなかった。
「これじゃ、ヴィレントがあなたに腹を立てる気持ちもわかるわ。あなたは、自分に原因があるなんて、考えもしないんでしょうけど」
「他人のあなたに、何がわかるの!!」
思わず怒鳴り返していた。
なぜ、この人にここまで言われなければならないのだろう。この人に私の苦労の何がわかるのだろう。
「威勢がいいじゃない。ヴィレントにも同じように言い返してみたら?」
冷たく言い放つ彼女。
悔しくて、涙が流れた。
私の苦しみなんて、何も知らないくせに。
直後に、スキルドが帰ってきたため、話はそこで終わりになった。
涙を流す私を見たスキルドが、何事かと心配してきたが、なんでもないの、と涙を拭いてごまかした。
この時、スキルドに泣きつかなかったのは、私なりの精一杯の意地だった。
シルフィは、私への態度とは対照的に、兄とは仲が良かったようだ。
皆でいる時、いつも、兄の横にべったりとくっついていたし、兄の方も、それを嫌がることなく受け入れていた。
兄とシルフィが2人で話しているところを遠目に見たことがある。
兄はあの時、シルフィの隣で、確かに笑っていた。
兄の笑顔など、両親が死んでからは、一度も見たことはなかったのに。
笑いあう2人を見た私の気持ちは、とても複雑だったことを覚えている。
兄が私に手を上げなくなったのは、スキルドのおかげなのはもちろんだが、シルフィのおかげもあったのだろう。今はそう思う。
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