スキルドとシルフィ
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て聞く声がした。
ゆっくりと助け起こされ、そちらを振り返ると、
「大丈夫かい?」
初めて見る、茶色の髪の青年がいた。
それが、彼との出会いだった。
私は彼に支えられながら、宿に戻った。
彼は、怯える私と怒る兄を引き離し、話を聞いてくれた。
兄以外の人と口を利くのは、本当に久しぶりだった。
「俺はスキルド。君の兄さん、ヴィレントに助けてもらったんだ」
スキルドは、あの場に偶然居合わせたわけではなかった。兄に付いて、この街にやってきたのだという。
私から事情を聴き終えた彼は、
「そうか……、君も大変だったな」
気の毒そうに、そう言った
「わかった、俺からヴィレントに話すよ。君が酷い目に合わないように」
優しい顔で言う彼に、そんなことができるわけがないと、私は言った。
「大丈夫、あいつは俺の命の恩人なんだ。話せばちゃんとわかってくれるさ。俺に任せてくれないか?」
そんなはずはない。兄が話の通じる人間なら、私が何年にも渡って辛い目に遭い続けるわけがない。
きっとスキルドも、兄に逆らえば、殴られ、蹴られ、出て行ってしまうに違いない。
私はそう思っていた。
だが、不思議なことに、そうはならなかった。
この日を境に、私は兄から殴られることはなくなったのだ。すべて、スキルドのおかげだった。
しかし、私と兄の仲が改善したかと言われると、完全にそうとは言えなかった。
兄と一緒にいる時は、必ず、彼が間に入ってくれるようになった。
私は、彼の背中に隠れ、いつも、兄と目を合わせないようにしていた。
兄もまた、そんな私をほとんど無視するようになった。
殴られることこそなくなったが、以前よりさらに、私達の間には、距離ができた気がした。
それでも、兄の暴力から逃れることができた私は、彼のおかげで、間違いなく救われていたはずだった。
他にも生活に変化はあった。
兄が稼ぎに出て数日帰らないことは、相変わらずだったが、スキルドは頻繁に私の様子を見に戻ってきてくれた。
長い時でも、彼が2日以上、私を1人にすることはなかった。
これまで、たとえパンが尽きなくとも、1人で帰りを待つのは心細かった。
「ただいま、チェント」
だから、彼が帰ってくると、私も笑顔で迎えた。
「おかえりなさい、スキルド」
彼のおかげで、飢えたまま、放置されることもなくなった。感謝してもしきれない。
あの時の私はもう、彼なしでは、生きられなくなっていた。
シルフィ・ディバード。
私が彼女に抱く感情は、今でも複雑である。
彼女は、スキルドの双子の妹。彼女もまた、スキルドとともに、兄に助けられたという話だった。
容姿も性格も、スキルドとはあまり似ていないと、私は思った。
私より大人びて
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