第十一話 退く中でその十四
[8]前話 [2]次話
「ことが済めばよいわ」
「戦は避けますか」
「戦になれば当家も本願寺も只では済まぬ」
お互いに大いに傷付いてしまう、そうした事態に陥ってしまうというのだ。
「下手とすれば共倒れになりかねぬ」
「だからこそですね」
「それは避ける」
戦、それはというのだ。
「そうしたいが若しもな」
「何かあれば」
「それが些細なことでもな」
その些細なことからというのだ。
「当家と本願寺はその全てを賭けた戦に入ってしまうわ」
「領国のあちこちで」
「二十万以上の兵と数十万の門徒がぶつかってな」
そのうえでというのだ。
「とてつもない戦になるわ」
「そこまでの者達がぶつかる戦なぞ」
「聞いたことがなかろう」
「本朝ではありませんね」
「異朝ならともかくな」
明、そしてこの国の前の王朝の頃はというのだ。
「それが本朝になるとな」
「ありませんね」
「そうじゃ、それだけの戦になる」
「流れる血も多く」
「恐ろしいことになるわ、だからな」
「本願寺との戦は」
「おそらくあちらもそう思っておる」
本願寺、特にその法主である顕如はというのだ。
「あちらもお愚かではないからな」
「それだけにですね」
「お互いに穏便にいけばよいが」
「その若しもがですね」
「わしは恐ろしいのじゃ」
帰蝶にもこう言うのだった。
「どうにもな」
「そういうことですね」
「うむ、それでことを進めていく」
「戦に成らぬ様に」
「これからもな」
「わかりました、では」
「その様にな、では今宵もな」
信長はここまで話してだ、帰蝶に微笑んで述べた。
「寝るとしよう」
「そうされますね」
「寝てそしてな」
「明日もですね」
「天下の為に励むとしよう」
こう言うのだった。
「その為にもな」
「今はですね」
「休む」
こう言ってだった、信長はこの日は休んだ。だが事態は彼が望まぬ方向に進んでしまうことになった。
第十一話 完
2018・7・24
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ