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戦国異伝供書
第十一話 退く中でその十二

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「備えを置こう、鳥取の城にも兵を置き」
「瀬戸内にもですか」
「水軍を置いてですか」
「備えますか」
「二郎、お主はじゃ」
 信長はその水軍を率いる九鬼に声をかけた。
「伊勢と志摩だけでなくな」
「瀬戸内にもですな」
「そうじゃ、堺や播磨等の港に兵と船を多く置いてじゃ」
 そうしてというのだ。
「備えておれ」
「わかりました」
「そうして毛利の水軍や一向宗に味方する海賊が出てもな」
「退けよというのですな」
「そうじゃ、幸い瀬戸内の東は我等が握っておる」
 伊勢志摩の海だけでなくだ、そうして信長はその海の政も行っていて海賊達を取り締まり自身の軍勢に迎え入れているのだ。
「それでじゃ」
「瀬戸内の守りも抑え」
「毛利の水軍にも備えよ」
「わかり申した」
「毛利の水軍は強いが」
 その主軸は村上水軍だ、戦国の水軍でも最強とさえ言われている。
「数はこちらが上、船の質も武具も上じゃ」
「だからですな」
「今はしかと守れ、わかったな」
「その様に」
「美濃の東は犬山城を抑えとする」
 武田が来るそこにはというのだ。
「そして北陸はな」
「越前ですな」
 柴田が言ってきた。
「あちらですな」
「あそこに大きな城を築いておこう」
「それは何処に」
「北ノ庄じゃ」
 信長はその場所も述べた。
「あそこに確かな城を築いてじゃ」
「若しもですな」
「上杉家が来てもな」
「越前で止めますか」
「そうする、そして播磨はな」
 最後はこの国だった。
「姫路じゃ」
「あちらにですか」
「城を築き」
「そうしてですか」
「抑えとしたい、無論備前との境にもじゃ」
 そちらにもというのだ。
「確かな城を築いてな」
「毛利家への備えとする」
「そうしますか」
「今度は」
「そうしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「諸大名とことを構えてもな」
「充分守られる様にして」
「そうしてですな」
「万が一本願寺と何かあっても」
「いい様にしますな」
「そうせよ、本願寺の方も戦は望んでおらぬ様じゃが」
 それでもというのだ。
「世の中どうなるかわからん」
「だからこそですな」
「備えはしておき」
「そうしてそのうえで」
「いざとなれば」
「ことを抑えて」
「戦いますか」
「そうする、ではいいな」
 こう言ってだ、そしてだった。
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