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戦国異伝供書
第十一話 退く中でその十

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「よりな」
「難しいとですな」
「思っておったが」
 それがというのだ。
「ここまで順調だとな」
「かえってですな」
「うむ、怖くなるわ」
「では」
「こうした時こそ気を引き締めるか」
 こう言うのだった。
「ここはな」
「それでは」
「うむ、何があってもな」
「いい様にしておきますか」
「若し比叡山や本願寺とことを構えても」
 例えそうなった時もというのだ。
「すぐにじゃ」
「兵を出せる様にですか」
「しておこう」
 こう言うのだった。
「今からな」
「殿、若しもです」
 ここで言ってきたのは丹羽だった。
「本願寺と戦になれば」
「伊勢もじゃな」
「伊勢も一向宗の者達が多いです」
「しかも尾張のすぐ傍のな」
「はい、伊勢長島にです」
「それに近江、越前にな」
「四国にもいます」
 そちらにもというのだ。
「そして摂津、河内、和泉もそうで」
「特に摂津はな」
「その本願寺があります」
「しかも傍には紀伊があるが」
 信長はまだ自身が勢力に収めていないこの国のことも話した。
「あそこは雑賀衆がおるが」
「はい、雑賀衆もいますし」
「雑賀衆もまた一向宗じゃ」
「ですから若し一向宗と揉めますと」
「国全体での戦じゃ、加賀も巻き込んでな」
 摂津と並ぶ本願寺の拠点であるそこもというのだ。
「しかも三河のな」
「徳川殿のご領地ですが」
「そこもじゃ」
 信長はすぐに答えた。
「問題じゃ」
「左様ですな」
「竹千代も厄介なことになる」
「だからこそですな」
「本願寺とはことを構えたくない」
「穏便にですか」
「ことを進めたい」
 こう言うのだった。
「何とかな」
「では」
「穏健にことを進めるが」
 しかしというのだ。
「だがな」
「やはりですな」
「何か起こればな」
「その時は」
「すぐに兵を進める様にしておく、しかもな」
 信長は強い声でだ、家臣達に言った。
「よいな、今我等は二十万以上の兵が使える」
「はい、越前も手中に収め」
「そうしてです」
「我等はです」
「二十万以上の兵を動かせる様になりました」
「ではですか」
「二十万以上の兵を使い」
「そしてですか」
「そうじゃ、一気にじゃ」
 まさにというのだ。
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