暁 〜小説投稿サイト〜
流星のロックマン STARDUST BEGINS
精神の奥底
74 The Day 〜中編〜
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めなかった。

「その後、彼女へのイジメはエスカレートした。今度はダークチップを使った卑怯者として。ネットバトルという“盾”を失った彼女は直接暴力を奮われるようになった」
「……」

あまりの生々しい話にハートレスも表情を崩さないようにしていたが、眉の辺りが歪んだ。
しかし次の一言でハートレスの鉄壁の表情は崩壊した。

「でもそれからしばらくして、彼女はサイトくんと出会った」
「え?」
「3年前、すぐそこの公園で虐められていた彼女の前にサイトくんが現れた」
「3年?彼女と彩斗が初めて出会ったのは、ついこの間のはずじゃ……」
「サイトくんは公園での事は覚えていたみたいだけど、それがミヤさんだとは気づいてなかった」

アイリスは昨日の公園での彩斗の告白を思い出す。
徐々に過去と今が繋がっていくのを感じつつ、アイリスは日記の続きを読む。

「『それはあの日の男の子のこと。颯爽と現れて、私を助けてくれたあの子。あの子のことを思い出すと、どうしてだろう、心が落ち着く。決して私のやったことが無かったことになりはしないけど、こんな私にも助けてくれる人がいると思うと、人生捨てたもんじゃないって思える』」

ハートレスは修正パッチがインストールされたのを確認すると、そのまま自室に戻ってソファに横になった。
結局、彩斗は目を覚まさなかった。
もう今の自分には手の施しようがない。
その上でアイリスの話を思い出しながら、彩斗のこれまでの人生を振り返る。
自分の欲望の為に彩斗の人生を利用してきた。
その為に普通の子供が経験し得ないような辛い目にも遭わせた、更に自分の目の届かないところで散々辛い目に遭っていた。
ハートレス自身、罪悪感を覚えていた。
このまま眠り続けた方が、彩斗にとっては幸せなのかもしれない。
そう思い始めていた。

「でも尚更ここで終わるはずがない。そうよね」

だがやはり希望は捨てきれなかった。
むしろ、ここまで一人で耐えて、乗り越えてきた彩斗がここで終わるはずがないと、ハートレスにしては珍しく根拠の無い希望が心の片隅に残っていた。
そしてそれに応えるように、一筋の雫が零れ落ちた。

「......え?」

その場にいた誰もが自分の目を疑った。
眠り続ける彩斗の目から僅かに、だが確実に涙が流れ落ちたのだ。







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