精神の奥底
74 The Day 〜中編〜
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を失った日を。でもあの日のことも思い出す。それは……』」
「何をしているの?」
ハートレスが部屋に入ると、アイリスは何かを読んでいた。
まるで眠り続ける彩斗に対して読み聞かせをしているようだった。
おまけに今にも泣きそうな表情で機械のように何かを読み続けるアイリスの姿に、ハートレスも一瞬固まってしまった。
その表情は部屋の片隅で膝を抱えて下を向くメリーと頭を抱えて苦痛の表情を浮かべる七海、この二人の悲しみとは別の悲しみを抱えていた。
「ハートレス、さっき誰かが訪ねてきたんじゃ……」
「もう帰った。幸い、この子の穴が埋まった……とまで言えないけど、幾分か状況は進歩したわ」
「そう……」
「えぇ……ところで、それは?」
「ミヤさんの日記帳みたい。サイトくんが持ってた」
「日記帳……にしては、随分と深刻なことがことが書いてるようだけど?」
「それは……多分……」
「トラッシュ、戻りなさい」
『……』
ハートレスはトラッシュをトランサーに戻すと、それを彩斗の腕に装着させた。
そしてシドウが持ってきた修正パッチを挿入し、プログラムを実行させる。
「何をするの?」
「ちょっとした賭け」
最新のモバイル端末向けSoCと高速フラッシュストレージを搭載したトランサーに掛かっても、その大容量さ故の遅々としたアップデートが始まった。
「で、多分何?」
「多分……これはミヤさんの懺悔の日記なのかもしれない」
「懺悔?」
「うん、この日記が書かれ始めたのは4年くらい前のとある日。彼女は……友達を裏切って…“死なせてしまった”」
「え?」
アイリスの言葉を聞いて、七海はゆっくりと顔を上げた。
思い当たる節があったのだ。
「どうやら彼女は昔、クラスメイトにイジメの標的にされて無理やりネットバトルをさせられていたみたい。唯一の友達だったそのネットナビもその度に傷ついた」
「子供は容赦ってものを知らないから……」
「でもある日、彼女は街中である商人からチップを買った。『友達を助けてあげられる魔法のチップ』だって言われて。でも違った」
「……」
「そのチップはダークチップだったの。その結果、ネットナビは暴走、イジメっ子たちのナビをデリートして姿を消した。優しかった人格を失い、獣のような荒々しい性格となって」
「なるほど。ある意味では友達を“死なせた”ってわけね。それでそんなに悲しい顔をしていたのね。人間とネットナビが決別した現実を目の当たりにして」
「その話……覚えてる」
「え?」
「私はその時もミヤが大怪我した時も何もしてあげられなかった……だから、せめて今度はミヤが助けようとした沢城くんの助けになろうと……でも……」
七海は再び頭を抱えて泣き始めた。
しかしアイリスは語るのを止
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