精神の奥底
74 The Day 〜中編〜
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
した装備よりも使えるものがあるはずよ」
「コイツは?時計なら持ってる」
シドウはルームキーを胸ポケットに入れながら、左腕のアクアレーサー・キャリバー16を見せた。
「発信機が仕込んである。このボタンを3秒間押し続けると、あなたの居場所が私に伝わる」
「救難信号か?」
「いいえ、あなたなんか助けないわよ。それはあなたが安食に負けた時に作動させる為のもの」
「じゃあ……」
「もし安食に負けるようなことがあれば、あなたもろとも小型ミサイルで半径50メートルを吹き飛ばすわ」
「……本気で言ってんのか?」
「えぇ、もちろん」
シドウもアシッドも一度顔を合わせて、今の発言の破壊力を確認し合った。
良くも悪くも嘘のつけない二人の表情は一言で言えば、『微妙』そのものだった。
単純に引き攣っているようにも、恐怖に震えているようにも見える。
「……だがな、これホントにここを押した時だけ発信機が作動するのか?盗聴器なんか仕込んでないだろうな?」
「そこのアシッドにでも聞くといいわ」
『……』
アシッドは一度だけコクリと首を立てに振った。
「そうか。じゃあ……街は任せたぞ」
「あなたに言われるまでもないわ」
シドウは右腕に時計を着け、その場を立ち去った。
ハートレスを100%信用したわけではない。
だが今の会話に限って言えば、ほぼ嘘はついていなかっただろう。
昔からハートレスはディーラーの中でもかなり特異な存在であることは分かっていた。
ディーラーの企みとは別に何か目的があって動いている。
しかしディーラーとしての任務は確実にこなし、キングに悟らせないどころか、むしろ信用を勝ち取っている。
『シドウ、彼女を本当に信用しても?』
「いや、止めておけ」
『では……』
「だけど彼女は何か企んでる。そういう時は信用しても大きく裏切られることはまず無い。特にシンクロナイザー、アイツが絡む時はそうだった」
『彼女とシンクロナイザー……スターダストとの間には何らかの特殊な繋がりが?』
「だろうな。全くの勘だが、恐らく彼女の企みには、アイツが必要不可欠ってことだろう」
シドウは門をくぐって外に出ると、一度振り返ってその巨大な屋敷を見た。
「何を企んでる、ハートレス」
シドウが心に一抹の不安を浮かべていた時、ハートレスは屋敷に戻り、彩斗の部屋に向かっていた。
修正パッチを使ったところで彩斗が目覚めるはずはない。
しかし心の何処かでシドウとは対照的に一縷の望みを抱いていた。
破壊され、床に倒れ込んで無残な姿を晒すドアを踏まぬように部屋に入る。
「『9月19日、今日は土砂降り。あれからもう2年。今でも夢であの時のことを何度も思い出す。私が一番醜くなった日、私のせいで大切な友達
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ