精神の奥底
74 The Day 〜中編〜
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「何!?」
庭のセキュリティシステムが何かを検知した。
だが監視カメラ映像を確認する限り何も映ってはいない。
桜鼠色のカーテンを開け、ベランダに飛び出す。
「これは……」
肉眼では何も確認できなかった。
雨が降っているが、特別視界が悪いというわけではない。
自室のベランダからいつも見ている光景そのものだった。
だがビジライザーを着けるとその世界は一変した。
「トラッシュ!?」
赤い光と青い光、二つの光が激しくぶつかり合っている。
これは電波体同士の抗争だとすぐに分かった。
青い光はトラッシュに間違いない。
侵入者が近づいていることに気づき、番犬のごとく飛び出していったのだ。
だが赤い方の正体が分からなかった。
ハートレスの頭には、Valkyrieがここを嗅ぎつけてやってきたという最悪のシナリオが思い浮かぶ。
電波ウイルスの群れや数人の電波人間程度であれば、防衛システムで追い払うことも可能だろうが、Valkyrieが相手となれば話は別だ。
まして彩斗の意識が戻らない以上は勝ち目は無いと言っていい。
手段があるとすれば、一度地下のガレージに逃げ込み、隙を見てここを放棄して逃げ出すことだ。
反射的に行動を起こそうとする。
しかしその瞬間、ハートレスのポケットの中でiPhoneに着信が入った。
「非通知……」
『ハートレスか!?』
「その声…暁シドウ……!」
電話を掛けてきたのは、かつてディーラーに反旗を翻した男、暁シドウだった。
庭で激しく二匹の電波体が争っているせいで通信に干渉し、声にノイズが入って音質は下がっているが、ハートレスにはすぐに分かった。
だとすれば、トラッシュと争っている電波体の正体もおおよそ見当がつく。
アシッドだ。
『トラッシュを止めろ!攻撃を止めさせろ!』
「……チッ!」
ハートレスは電話を切ると、自室を飛び出して階段を駆け下りる。
「ハートレス!?どうかしたの!?」
「部屋に戻って鍵を掛けなさい」
異変に気づいたアイリスが彩斗の部屋から吹き抜けを見下ろす形で声を掛ける。
ハートレスはアイリスに部屋に閉じこもるように指示を出すと、玄関を開けた。
「トラッシュ、止めなさい」
外に出てハートレスはそう口にした。
すると途端にトラッシュは攻撃を止め、おとなしくハートレスの元へ戻った。
案の定、返事すら返さないが、やはりこちらの言葉は聞こえているし、意味も理解している。
しかも彩斗以外の命令は全く受け付けないロボットというわけでもないことがはっきりした。
ハートレスは軽くため息をつく。
それを確認すると、アシッドもシドウの元へと戻った。
シドウは門をくぐり、庭へと入って玄関の方へと歩いてくる。
『シドウ
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