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永遠の謎
136部分:第九話 悲しい者の国その九
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第九話 悲しい者の国その九

「エルザと巡り会えた」
「陛下がローエングリンではないのですか?」
「それは違うのですか?」
「あの方こそが」
「私も最初はです」
 ワーグナーはこう前置きしてから述べた。
「そう思っていました」
「あの方こそがローエングリンだと」
「貴方にとっても貴方の芸術にとっても」
「そうなのですね」
「はい、そうでした」
 言葉は明らかに過去形であった。
「確かに思っていました」
「しかし違ったと」
「あの方はローエングリンではないのですか」
「ではあの方は一体」
「何なのでしょうか」
「私がです」
 ワーグナーは自分のことから話す。そこを基準としてだ。
「ローエングリンと言いましたね」
「はい、確かに」
「それは」
 友人達も彼の先程の言葉からそれを聞いていた。そのうえで頷くのだった。
「今も仰いましたし」
「その通りです」
「そうですね。私をローエングリンとすると」
 彼はその基準からまた話した。
「あの方はエルザなのです」
「エルザ=フォン=ブラバントですか」
「ローエングリンのあの姫ですか」
「陛下はそうなのですか」
「エルザ姫だと」
「しかし」
 友人の一人がここでこう言った。そのことは。
「あの方が姫とは」
「思えませんか」
「あの方は男性的な方です」
 彼はだ。王の容姿から言っていた。王の美貌はバイエルンだけでなく欧州全体に知られるようになっていた。その絵画の如き美貌はだ。
「背が高く顔立ちもです」
「はい、それはその通りです」
 王の容姿についてはだ。ワーグナーも認めるものだった。彼は毎日の如く王と会っていた時期がある。その姿は脳裏に残っているのだ。
「あの方ならローエングリンやタンホイザーの服を着てもです」
「実に似合いますね」
「それは間違いありません」
「あの方の容姿なら」
 これも認めるのだった。友人達もだ。
「騎士に相応しいです」
「実に」
「容姿はそうなのです」
 ワーグナーは何度も話していく。そのことをだ。
「しかしです」
「しかしですか」
「それでもなのですね」
「あの方は」
「そうです。何故エルザかというと」
 そこを話していく。
「あの方のお心がそうなのです」
「陛下のお心がですか」
「エルザなのですか」
「あの方は」
「はい、そうです」
 その通りだというのだ。
「あの方はです」
「御心が女性のものだというのですか」
「左様ですか」
「御心が」
「私もそのことに中々気付きませんでした」
 ワーグナーですらそうだったのだ。王のことを細かく知る彼でもだ。
 そのことを今自分でも考えているのだった。友人達に話しながらだ。
「あの方は御心は女性なのです」
「では
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