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緑の楽園
第二章
第21話 古代遺跡
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る黒い服。
 強いコントラストである。

 いや……今は男の容姿などどうでもいい。
 俺には、見えた。
 見えてしまったのだ。
 男が出てくるときに、黒く小さなL字型のモノを、上着のポケットに仕舞ったのを。

 それは、この国には存在しないはずのものだ。
 だが今のは見間違いなどではない。

「お前は誰だ。何のためにここにいる」
「僕ですか? 散歩です。旅人ですので」
「嘘をつくな」
「嘘ではありません」

 男は余裕のある表情だ。
 旅人で通すつもりか。

 いま俺と大ゲンカになっていた国王も、国王の連れも、近くにいた作業員も、ファーナ将軍も。この状況が呑み込めず、ただ見ているだけの状態になっている。
 俺は少し迷ったが、言うことにした。

「しらばっくれるな。お前が出てくるときに一瞬見えたんだ。拳銃を持っているだろ」

 俺のこの問いかけに、男の表情は一変した。
 一転して狼狽した表情になり、上着のポケットと思しき場所を触った。

「なぜ拳銃のことを……。もしや、あなたも人間……?」

 男は意味不明なことを口にし、そして続けた。

「……いや、今はそんなことを考えている場合ではありませんね。任務が優先です」

 何だ? この男はいったい何を言っているのだろうか。
 さっぱりわからない。

「予定が狂いましたが。こうなっては仕方がない。堂々とやらせてもらいます」

 男は上着のポケットから、黒く小さなL字型のモノを出した。
 そしてその先端を、国王のほうに向ける。
 向けられた国王のほうは、まだ状況が理解できず、固まっている。

「国王、お覚悟――」

 俺は二十二年の人生で、最高の反応速度を記録したかもしれない。
 この場で、あれが何かを知っていて、その危険性を理解しているのは、俺だけだ。
 俺しか、この場で動くことができる人間はいない。

 自分でも驚くほど、素早く体が動いた。
 国王の体の前に向かって、飛んだ。

 そして空中で体を少し捻り、男に対して背中を向けながら、国王の前に着地。
 国王の体をしっかり掴み、そして横に飛――

 パン――!

「うあぁ!」

 大きな破裂音とともに、強い衝撃が全身の隅々まで走った。
 同時に、右の腰からわき腹にかけて、突き刺されたような激痛。
 俺は国王の体を抱えたまま、覆いかぶさるように倒れた。

「い、今の音は……! リク! 大丈夫か!」

 下に敷かれるかたちになった国王が、起き上がろうとする。
 俺は、力を振り絞ってそれを抑え込んだ。

「に……にはつ……めが……くる……このまま……う……ぐあぁ…………がはっ」

 右わき腹が焼けるように熱い
 熱くてたまらない。

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