巻ノ最後 訪れるものその二
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「それはな」
「はい、言い訳になりますが」
「あの様なことをしなくて済んだ筈だがな」
「それがしもそう思っていましたが」
「無念であった」
家康にとってもというのだ。
「こう言うとあれじゃが茶々殿がな」
「政がおわかりおなら」
「そしてあそこまで頑迷であらなければ」
「大坂を譲ってくれて」
「他の国に移られていました」
「大坂さえ手に入ればよかったのじゃ」
家康にしてもというのだ。
「まことにな」
「左様でしたな」
「右大臣殿も聞いて頂ける感じでしたし」
「それならば」
「戦もせずともよかった」
大坂でのそれもというのだ。
「そこはしくじったわ」
「ですがあれは」
正純がここで家康に述べた。
「茶々殿のご気質では」
「致し方ないか」
「ああした方ではです」
最早と言うのだ。
「ああなるしかです」
「諦めるしかないか」
「そうかと」
こう家康に述べるのだった。
「致し方ないです」
「そうか、ではな」
「はい、それでは」
「大坂のことはあれでか」
「よしとすべきでしょう」
内密であるが秀頼は助かった、それでというのだ。
「太閤様との約束を果たした」
「それでか」
「大御所様は律儀を貫かれたと」
「わし自身約束を違えるのは嫌いじゃしな」
「公儀ならば」
「約束を違えて政は成らぬ」
そうなってしまうというのだ。
「諸大名も民達も納得せぬわ」
「約束を違える様な幕府では」
「だからじゃ、これからもな」
「幕府はですな」
「約束を違えぬままじゃ」
「政をしていくべきですな」
「うむ」
そうせよと言うのだった。
「ではな」
「はい、それでは」
「そのことも伝える、幕府の政には邪道は無用じゃ」
「王道、正道でですな」
「進めていくのじゃ、何があってもな」
天下万民と向かい合ってとだ、家康は幕臣達に告げ江戸の秀忠にも伝えさせた。その言葉を聞いてだった。
秀忠もだ、江戸城でこう言った。
「その通り、幕府はな」
「律儀をですか」
「まさにそれを」
「貫いていく」
江戸にいる幕臣達に答えた。
「当然余もな」
「律儀であられますか」
「これからも」
「そうして天下万民を治めていく、正道を歩んでいくぞ」
家康が言う政のそれをというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「天下泰平を守っていきますか」
「そうしていくぞ」
こう言ってだ、秀忠は天下をその律儀で守ることを誓った、だが大奥ではお江は今も暗い顔でいた。
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