第三章
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「わしが生きているまでの間に」
「では」
「わしはあの子がいいと言うかわしが死ぬまで」
「ヒナタさんとですね」
「一緒に暮らしていきます。ですから何かあったら」
その時はというのだ。
「ここに来るか連絡して下さい」
「わかりました」
先生は老人の言葉に頷いた、そうして彼にもヒナタのことを頼むと言った。そうしてヒナタの担任であり続けた。
それは一年だけだったがヒナタの担任でなくなっても彼を気にかけ見続けた、ヒナタはぼんやりとしたまま育ち。
高校まで進学し高校も卒業した、その頃には彼は芸術方面で思わぬ才能を発揮しぬいぐるみ等人形作家になっていた。
このことをだ、老人は今もヒナタのことを気にかけている先生に話した。
「しっかりとした事務所と専属契約をしまして」
「それで、ですか」
「もう後はです」
「人形作家としてですね」
「活動していくとのことなので」
「それで、ですね」
「わしも心配がないです、それでこの前ですが」
最初に会った時よりも老いている、八十を超えていてその分先が短いことは見てはっきりわかる状況だった。
「あの子と話をして養子に入れました」
「そうですか」
「ずっと思っていたことが適いました」
「ヒナタさんをですね」
「息子にして」
そしてというのだ。
「家族にすることが出来ました」
「それは何よりですね」
「その時にお父さんと言ってもらいました」
老人は先生に笑顔で話した、今もヒナタと暮らしている家の中で。
「本当に嬉しいです、あとどれだけ生きられるかわかりませんが」
「それでもですか」
「あの子を見守りたいです」
「不思議ですね。ふらりと前にいた子を拾って」
「妻に先立たれた時に」
「そしてずっと一緒に暮らしていますから」
「そうですね、若しかするとあの子は」
老人はヒナタのことをこう話した。
「神様が一人になったわしに送ってくれた」
「そうした人ですか」
「そうかも知れないですね」
「そうですか」
「あの子と暮らせて本当によかったです、一人でいるよりも」
ずっと、というのだ。
「よかったです、ですから」
「これからはですね」
「あの子の父親として生きていけることが」
先生に暖かい笑顔で話した。
「何よりも嬉しいです」
「それは何よりですね」
「本当に」
老人は笑顔のままだった、そうして家で仕事を続けるヒナタと共に残り少ない人生を生きていった。
ヒナタは世界的に有名な人形作家になりその方面で知らぬ者はいないとまでの人物になった。その彼がいつもプロフィール等で尊敬する人の欄に書いたり言うことは決まっていた。自分をここまで育ててくれたお父さんだとだ、いつもぼんやりとした感じは変わらないながらもこう書いて言っていた。それが彼
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