38話:救済
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美味だ。
「それと、シェーンコップ卿に口座を確認しておいてもらってね。時間を当家の為に割いているのは事実だから、従士扱いで給金を渡すから。」
この方はどれだけ俺に恩を着せるつもりなのか。いいとも。大恩を返せるような人物にいつかなってみせる。
宇宙歴771年 帝国歴462年 1月下旬
首都星オーディン リューデリッツ家所有車
パウル・フォン・オーベルシュタイン
私は、想定外の事態に少し戸惑っていた。話の始まりは幼年学校の入学試験を受け、上位での合格が決まって数日、幼年学校の先輩が当家を訪れ、『ザイトリッツの日』なる会食への参加を打診してきた事からだ。私の両目は先天的な義眼で、生まれながらに蔑まれてきた。ザイトリッツ殿は伯爵家の跡取りで准将だ。主催する会食の場にそんな人間が参加しては気分を害されるだろうし、私も好んで自分が蔑まれる場に参加したいとは思わないので辞退する旨、返答した。印象に残っているのは辞退という返事に先輩が驚いていたのと今にして思えば、義眼と認識しても先輩から蔑む感じがしなかったからだろう。
事が動いたのはさらに数日後のことだった。よくよく確認すると『ザイトリッツの日』を辞退したのは私が初めてで、主催者であるザイトリッツ准将は、会食のメインが好みではなかったからだろうと判断され、どこから聞いたのか、私が好む鶏肉メインのメニューを用意するので、改めて機会を頂戴したいと使者をよこした。
正直、気が重かったが、ここまでされてお断りはできない。お受けすると回答し、いま、その場に向かう車中だ。迎えの地上車も手配されていたし、迎えの担当者も、私が義眼であると知っているだろうに蔑む様子はなく、主賓のような扱いを受けている。馴れない扱いに正直戸惑う自分がいた。
オーベルシュタイン邸とリューデリッツ邸はそこまでの距離はない。すぐに到着し、ドアが開く。従者の服装をした妙に雰囲気のある男性に先導され、晩餐室に向かう。途中でシェパードの子犬が見えた。番犬というにはまだ幼すぎるだろう。ドアが開かれ、晩餐室に入る。おそらくザイトリッツ准将だろう。茶髪の男性が起立して出迎えてくれた。傍らに似た色の髪をした少年がいたが、顔立ちが違うためご子息ではない様だ。どうしたものかと思っていると
「ようこそ、ザイトリッツ・フォン・リューデリッツと申します。オーベルシュタイン卿、よく来てくれた。招くのにも関わらず卿の好みに合わせる事を忘れた。これは私の不手際だ。お誘いを受けてくれた事、感謝している。とはいえ、私と二人きりで会食というのも配慮に欠けると思ってね。同年代でこの屋敷に出入りしている者の同席を許してほしい。ワルター?オーベルシュタイン卿だ。ご挨拶を。」
「ワルター・フォン・シェーンコップと申します。同席させて頂きますがよろしく
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