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永遠の謎
13部分:第一話 冬の嵐は過ぎ去りその七
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第一話 冬の嵐は過ぎ去りその七

「楽譜を見たところそれも非常に斬新だ」
「音楽もですか」
「歌劇だが番号制をしていなくだ」
「そうした音楽は最近イタリアでもあるそうですが」
「確かタンホイザーといった作品だったな」
 その彼の作品名も話に出た。
「その作品は」
「タンホイザーですか」
「そうだ、タンホイザーだ」
 その作品の名前をまた言う叔父だった。
「タンホイザーという」
「あの伝説の詩人ですね」
「ワルトブルグのな」
「その彼の歌劇ですか」
「そうだ。そして」
 さらに話すのだった。次にこの名前を出してきた。
「今ローエングリンがドイツで上演されているな」
「ローエングリン」
 太子はその透明な響きの名前に目の色を僅かだが変えた。
 そしてだ。声も無意識のうちにうわずらせて話すのだった。
「確か。白鳥の」
「知っているのか」
「伝説は聞いています。その騎士の歌劇ですか」
「そうだ。部屋に来てくれ」
 叔父はここまで話したところで甥に自分の部屋に来るように勧めた。
「その評論を貸そう」
「有り難うございます。それでは」
「実際に読んでわかることだ」
 一見ということだった。
「それではな」
「はい」
 こうしてだった。太子は叔父に案内されて彼の部屋に入った。その樫の重厚な部屋にある机のところにだ。一冊の黒い表紙の本があった。 
 それを見てだ。太子は言った。
「この本がですか」
「そうだ、そのな」
「音楽家の本ですね」
 その著者の名前を見る。それは。
「リヒャルト=ワーグナー」
「今はお尋ね者になっている」
「何かしたのですか?」
「あの革命騒ぎの時にな。罪に問われたそうだ」
 叔父はこのことも甥に話した。
「それでだ」
「革命騒ぎに加担してそれでなのですね」
「ザクセンのドレスデンでな。あそこでも騒ぎがあったな」
「はい」 
 これはバイエルンでもザクセンでも同じだったのである。一八四八年の三月革命はだ。ドイツ全土に及びそして大変な騒ぎとなったのである。
 太子もこのことはよく知っていた。そしてであった。
 そのことを聞いたうえでだ。叔父にまた問うのであった。
「つまり革命家ですね」
「そういうことになる。今は何処にいるかわからない」
「生きてはいるのですね」
「一応はな」
 生きてはいるのだという。
「生きてはいるがだ」
「何処にいるかはですか」
「支援者達に匿われながら転々としているらしい」
「そうですか。そうした状況ですか」
「その通りだ。それでなのだが」
 ここ叔父は話した。
「この書はかなり難解だぞ」
「それ程までなのですか」
「そうだ、私も読んだがな」
 彼は難しい顔にもなった。そのうえで話すのだった。

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