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別人と思われて
第三章
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「あの人どっかで見たわね」
「そうよね」
「ええと、何処でかしら」
「ここに来てる人じゃないの?」
 楓はこの言葉に内心その通りと思ってくすりと笑った、だが。
 すぐにだ、女の子達はこんなことを言った。
「ええと、どのバンドだったかしら」
「何処のバンドだったかしら」
「あのバンドじゃないの?」
 ここで言ったバンドの名前は別のバンドだった、しかも。
 女の子達はそのバンドのベーシストどころかドラマ―の名前を言った、楓とは年齢は同じだが外見はあまり似ていない。
 その人ではないかという、それで女の子達は楓自身に聞いてきたが楓は何も知らないふりをしてこう答えた。
「違うわよ」
「そうですか、似てると思いましたが」
「違いますか」
「すいません、人違いでした」
「いいわよ」
 笑ってこう返したが女の子達は楓を近くに見ても似ているんですが等と言った、そして最後まで楓とは気付かなかった。
 それでだ、メンバー達と作詞作曲をしている間に笑ってこのことを話した。
「私だってね」
「全然わからなかったのね」
「そうだったのね」
「そうなのよ」
 実際にというのだ。
「これがね」
「まあそうかもね」
「楓っちライブの時と普段全然違うし」
「ステージはステージでね」
「まるで別人だしね」
「絶対にそれでよ」
 楓はメンバー達にさらに話した。
「皆わからなかったのよ」
「そうよね」
「じゃあ私達もでしょうね」
「ヴォーカルでもね」
「それでも地声と違うからね、私」
 ヴォーカルのメンバーも言ってきた。
「ちょっと」
「あんた歌の時声可愛いからね」
「地声のトーン低いのにね」
「そうなのよね、これでメイクしたら」
 ヴォーカルの娘もというのだ。
「別人に思われるわね」
「私達全員ね」
「楓っちと一緒でね」
「普段は気付かれないかね」
「別人に思われるわね」
「そうでしょうね、けれどそれがいいんじゃない?」
 楓は仲間にくすりと笑って言った。
「プライベートは守られるんだし」
「ああ、そうなるわね」
「普段気付かれないんだったらね」
「ステージから降りたら気付かれないから」
「それはいいわね」
「そうでしょ、じゃあいっそのことビジュアルもっと強く出す?」
 楓は仲間達に笑ったままこうも提案した。
「そうする?」
「それもいいわね」
「じゃあそうしたことも考えて」
「バンドやっていきましょう」
「これからもね」
 仲間も楓の言葉に頷いた、そうしてだった。
 バンドはよりビジュアル面を目立つ様にして派手にしていった、それでメジャーデビューもして人気グループにもなったが楓も他のメンバーも日常で気付かれることはなかった。精々別人と思われるだけの平和な日常を過ごすことが
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