第二章
[8]前話
「けれどね」
「これからはですか」
「そこで住んでね」
「何と言えばいいか」
「これでもまだ足りないと思っているわ」
畏まっているアインに言うのだった。
「貴女のこれまでのことを思えば」
「とんでもない、私は主にどれだけよくしてもらったか」
「貴女がそう思っていることは私もなのよ」
自分もというのだ。
「だからよ」
「いいのですか」
「騎士の位もお屋敷のこともね」
「何と言えばいいか。では」
「では?」
「私はこれからもです」
感極まった顔でだ、アインは主に言うのだった。
「主にです」
「その剣を捧げてくれるというの」
「この度の恩に報いる為に」
「恩を受けているのは私だけれど」
それでもとだ、主はアインの心を受けてその気持ちを理解してだ。彼女に言った。
「貴女がそうしたいのならね」
「これからもですね」
「ええ、お願いするわ」
「それでは」
アインは主に敬礼した、そして皇帝から直接騎士に任じられ主に屋敷を与えられてもだった。彼女の傍にいることにした。
屋敷には殆ど帰らず主の傍にいた、そうして言うのだった。
「これからもです」
「何かあれば」
「はい、私がです」
毅然として言うのだった。
「お護りします」
「有り難いわね、私は長く生きたけれど」
それでもと言うのだった。
「貴女と出会えてね」
「そうしてですか」
「よかったと思うわ」
「そう言って頂き何よりです」
「ではこれからもね」
「宜しくお願いします」
「こちらもね」
アインに笑顔で言った、アインは主が天寿を全うするまで彼女の傍にいた。その後は騎士として帝国に奉職し夫も迎えた。だが部下達にも息子にも主のことを話し続けた。自分があるのは主がいてくれたからこそとだ。深い恩義と忠義を以てそうした。
忠臣への報い 完
2018・9・17
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