第一章
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忠臣への報い
アイン=ソフは剣士でありある女性領主の従者を務めている。常に主の傍にいて身辺の護衛やいざという時の将も務めている。
だが主、長い間連れ添っていた夫に先立たれ今は息子に家を譲り隠居している身でこうアインに言うのだった。
「話大社もう老い先短くて家も息子に譲って」
「それで、ですか」
「もう思い残ることはないわ。けれど今の皇帝陛下は西の王国を警戒しておられて」
長年敵対しているこの国にというのだ。
「ことを構えることも多いから」
「それで主もですね」
「ええ。私が女だてらに将軍だったから」
それが為にというのだ。
「今年も戦場に出たわね」
「見事なご活躍でした」
「けれどもう歳で。本当は戦争をせずに済めば」
軍人としてだけでなく長年夫と共に領地を治めてきた政治家としても言うのだった。政治家としての彼女は夫を助け長年善政を敷いたことで知られ家と領地を継いだ息子もこのことは幸いにして同じである。
「いいのだけれど」
「民が苦しまないからですね」
「そうよ。そして貴女もね」
安楽椅子に座る自分の傍に毅然として立つアインを見て言うのだった。
「戦の場に立つこともないわ」
「私は主がおられるところには」
「何があろうともというのね」
「はい」
毅然として答えるのだった。
「あります、そして」
「私を護ってくれるのね」
「それが私の全てですから」
それ故にというのだ。
「果たさせて頂きます」
「そして私が命じれば」
「戦場に行きます」
「そうね。貴女の剣は見事よ」
主も認めることだった、このことは。
「まさに一騎当千よ」
「お褒めに預かり光栄です」
「貴女にどれだけ助けられたか」
戦の場で、そして王国や政敵、狂った暴漢達の刺客に襲われた時にだ。アインは実際に主を幾度も助けてきた。まさに主の剣だった。
「そう思うと何かしたいけれど」
「私は既に多くの俸禄と住むところ、食べるものそして服を頂いています」
アインは主に勿体ないと答えた。
「ですからこれ以上のものは」
「そういう訳にはいかないわ。貴女のこれまでのことを思うと」
主はそのアインに言うのだった。
「とてもね」
「それでは」
「何かあるかしら」
こうも言うのだった。
「貴女への報いは。もういい馬も剣も授けたし」
「どちらも有り難うございます」
「他に何があるのかしら」
アインのこれまでの忠義と働きに応えられるものは何か。主は暫くの間真剣に考えた。そしてその結果として。
彼女と共に帝都に行った、そこでだった。
アインにだ、帝都の家の屋敷においてこう言った。
「明日貴女は皇帝陛下から騎士に任じられるわ」
「私が騎士にですか」
「そうよ、帝国
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