127部分:第八話 心の闇その十七
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リアは排除しなければならない相手です」
それはだ。プロイセンでは最早言うまでもないことだった。彼等の小ドイツ主義に対して大ドイツ主義のオーストリアはだ。邪魔でしかないからだ。
しかしだった。ビスマルクはだ。勝利を収めても多くは求めないというのだ。それは言うのであった。
それを聞いてだ。周りはいぶかしみながら問うのであった。
「徹底的に叩かなければです」
「なりませんが」
「それをされないのですか」
「それは何故ですか」
「戦争の後だ」
それからをだとだ。彼は言うのだった。
「その戦争の後のことだ」
「オーストリアとの戦争の後とは」
「一体?」
「そこに何かあるのですか?」
「それでは」
「そうだ、オーストリアとの戦争に勝ってもオーストリアは残る」
これは絶対のことだった。プロイセンもオーストリアを滅ぼすことはできない。国力から考えても欧州の情勢からもだ。それはできないことだった。
当然ながらビスマルクはそれもわかっていた。それでなのだった。
「そして残らなければならないのだ」
「オーストリアは、ですね」
「あの国は」
「それもわからないのですが」
「だからだ。オーストリアとは確かに戦い勝つ」
この絶対の前提の後の話であった。
「それからだ」
「それからとは」
「ですからそれがわからないのですが」
周りの者はだ。どうしてもわからず首を捻るばかりだった。
それでだ。こう口々に言うのであった。
「あの国は排除しなければならないというのに」
「それで終わらないのですか」
「どういうことですか」
「オーストリアは排除するがその後で彼等とは手を結ぶ」
これが彼の考えであった。
「そしてそのうえでロシアともだ」
「では三国で東欧を安定させる」
「そういうことですか」
「つまりは」
「そうだ、そうするのだ」
これこそがビスマルクの考えであった。彼は既にそのことまで頭の中に入れていたのである。先を読んでいたのではなかった。先の先をであった。
「わかったな」
「ううむ、そこまで考えておられたのですか」
「ドイツ帝国を築いた先まで」
「そこまでとは」
「そこまで考えてこそだ」
ビスマルクは鋭い目で述べた。
「それが政治なのだ」
「では閣下、まずはオーストリアと戦い」
「そして勝利を収め」
「そのうえで」
「そうだ、そうするのだ」
こう話すのであった。ビスマルクは先の先を読んでいた。そしてそれは政治だけでなくだ。バイエルン王についてもだ。政治では確かな手応えを感じていた。しかし王に対してはだ、憂いを感じずにはいられないのだった。
第八話 完
2011・1・17
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