暁 〜小説投稿サイト〜
永遠の謎
127部分:第八話 心の闇その十七
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
リアは排除しなければならない相手です」
 それはだ。プロイセンでは最早言うまでもないことだった。彼等の小ドイツ主義に対して大ドイツ主義のオーストリアはだ。邪魔でしかないからだ。
 しかしだった。ビスマルクはだ。勝利を収めても多くは求めないというのだ。それは言うのであった。
 それを聞いてだ。周りはいぶかしみながら問うのであった。
「徹底的に叩かなければです」
「なりませんが」
「それをされないのですか」
「それは何故ですか」
「戦争の後だ」
 それからをだとだ。彼は言うのだった。
「その戦争の後のことだ」
「オーストリアとの戦争の後とは」
「一体?」
「そこに何かあるのですか?」
「それでは」
「そうだ、オーストリアとの戦争に勝ってもオーストリアは残る」
 これは絶対のことだった。プロイセンもオーストリアを滅ぼすことはできない。国力から考えても欧州の情勢からもだ。それはできないことだった。
 当然ながらビスマルクはそれもわかっていた。それでなのだった。
「そして残らなければならないのだ」
「オーストリアは、ですね」
「あの国は」
「それもわからないのですが」
「だからだ。オーストリアとは確かに戦い勝つ」
 この絶対の前提の後の話であった。
「それからだ」
「それからとは」
「ですからそれがわからないのですが」
 周りの者はだ。どうしてもわからず首を捻るばかりだった。
 それでだ。こう口々に言うのであった。
「あの国は排除しなければならないというのに」
「それで終わらないのですか」
「どういうことですか」
「オーストリアは排除するがその後で彼等とは手を結ぶ」
 これが彼の考えであった。
「そしてそのうえでロシアともだ」
「では三国で東欧を安定させる」
「そういうことですか」
「つまりは」
「そうだ、そうするのだ」
 これこそがビスマルクの考えであった。彼は既にそのことまで頭の中に入れていたのである。先を読んでいたのではなかった。先の先をであった。
「わかったな」
「ううむ、そこまで考えておられたのですか」
「ドイツ帝国を築いた先まで」
「そこまでとは」
「そこまで考えてこそだ」
 ビスマルクは鋭い目で述べた。
「それが政治なのだ」
「では閣下、まずはオーストリアと戦い」
「そして勝利を収め」
「そのうえで」
「そうだ、そうするのだ」
 こう話すのであった。ビスマルクは先の先を読んでいた。そしてそれは政治だけでなくだ。バイエルン王についてもだ。政治では確かな手応えを感じていた。しかし王に対してはだ、憂いを感じずにはいられないのだった。


第八話   完


                2011・1・17

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ