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戦国異伝供書
第十一話 退く中でその三
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「下がるが。しかしこれはな」
「はい、殿のご決断が早かったので」
「もう十万の兵は全て金ヶ崎の城を出た」
「すぐに越前も出ようとしています」
「ではな」
 それではと言うのだった。
「このまま行けば間に合う」
「兵は失いませぬな」
「少なくとも我等はな」
 丹羽達が率いている織田家の主力の軍勢はというのだ、彼等は柴田と佐久間それに丹羽が主に率いその下に織田家の諸将が揃っている。
「まずは近江の西岸に入られる」
「そして後は」
「その西岸をひたすら下ってな」
「近江の南に入れば」
 即ち織田家の領地だ、近江は北は浅井家が治め南は織田家が治めているのだ。その南に入ればなのだ。
「まずは安心じゃ。近江の南の守りは固めておる」
「浅井殿の軍勢も通れませぬぞ」
 金森が言ってきた。
「流石に」
「うむ、だからな」
「まずは越前から出て近江の入り口を出て」
「すぐに西岸に入ろうぞ」
「それでは、しかし」
 ここで金森は首を傾げさせてそうして言った。
「一つ気になることがありまする」
「浅井殿か」
「あの方が裏切られるか」
 それがとだ、金森はとても信じられないと言ったのだった。
「それはとても」
「わしもそう思う、あの方が裏切る方か」
「あそこまで義理堅い方はそうはおられませぬ」
「徳川殿と同じだけな」
「義理堅い方、それ故に殿も完全に信頼されているというのに」
「若しや」 
 丹羽はふと気付いた顔になって言った、兵達は粛々と動いておりその動きは十万の大軍とは思えないまでに速い。
「浅井殿のお父上がな」
「あの方がですか」
「織田家に反旗を翻されたのか、しかし」
「それもですな」
「あの方もそこまで激しい方か」
 それはと言うのだった。
「どうもな」
「それは、ですな」
「思えぬが」
 丹羽は金盛にこう述べた。
「わしには」
「それがしもです」
「それがしも」
 金森も池だも同じだった。
「どうもです」
「浅井の大殿殿が裏切る様な」
「そうした動きを取られるとは」
「幾ら朝倉家との付き合いがあろうとも」
「それでも」
「そんなことはとうの昔にわかっておる筈」
 丹羽はこうも言った。
「当家と朝倉家の仲の悪さはな」
「それは昔からで」
「特に今はですな」
「いがみ合っていた」
「それは天下の誰もが見て知っていること」
「しかも浅井家は双方の間にある」
 丹羽はこのことも指摘した。
「ならばな」
「余計にご存知ですな」
「むしろ他の家よりも」
「そのうえこれまで何も言ってこず」
「黙認でしたが」
「それがです」
「急にですから」
 裏切りに出たとだ、二人も言うのだった。
「余計にわかりませぬな」
「この度の浅井家の動きは」
「猿夜
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