提督、里帰りする。その5
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「……爺ちゃんからしたら、金剛は懐かしい相手かもな」
「へっ?」
俺の小さな呟きに、キョトンとした顔を向けてくる金剛。
「言ってなかったか?爺ちゃん、昔『金剛』に乗ってた事があんだよ」
「えええぇぇぇぇ!?でも、ワタシは……」
戦艦『金剛』の最期。レイテ沖海戦で損傷を受けていた金剛は、台湾沖で潜水艦の魚雷2発を喰らい、浸水。悪天候も重なり浸水の被害が甚大となって沈没した。その際、1300名を超える乗組員が犠牲となっている。その最後の停泊地がブルネイってのは、何たる皮肉かね。
「幸か不幸か、『金剛』に乗り始めてすぐに大怪我を負ってな。戦列復帰は難しく、予備役になっててそのまま終戦を迎えたお陰で助かったって聞いてるよ」
「そ、そうだったんデスか……」
「まぁ、お前とは2世代前から浅からぬ因縁があったって事さな」
俺がそうやってニヤリと笑うと、堪えきれずに金剛もプッと噴き出す。
「……何でこの2人、お墓の前でイチャついてんですかね?」
「さぁ?でも、孫夫婦が仲良さそうで安心してるんじゃない?」
という青葉と陸奥の会話が聞こえてきたが、聞こえないフリだ。
「さて、と。お供えして帰るか」
そう言って俺は途中で買いに行っていたお供え物を袋から取り出す。
「お、お酒と煙草!?」
「普通、こういう時ってお花とかお菓子じゃないの!?」
「バ〜カ、花とか菓子なんて供えてみろ。今晩爺ちゃんが枕元に化けて出てくるわ。『もっとマシなもん寄越せ〜』ってな」
実際、マジで出てきそうだから困る。取り出したのは日本酒の一升瓶と『ピース』の缶、それに紙コップだ。俺は皆に紙コップを手渡し、日本酒を注ぐと、残りは墓石にドバドバと掛けた。そしてピースの缶から1本取り出し、くわえて火を点けてから線香を立てるスペースに挿した。
「花とか菓子よりゃ、こっちの方がいいだろ?爺ちゃん。ほら、お前らも爺ちゃん達と乾杯してやってくれ」
俺に促されて各々墓石に向かって紙コップを向けた。さて、俺も一杯……飲もうとしたら横から加賀に掠め取られた。
「あっ!?何しやがる!」
「ダメよ。帰りも貴方は運転でしょ?」
「だったら運転替わってくれよ、加賀」
ウチの鎮守府でも軽巡以上のサイズの艦娘の中には、運転免許を取得している奴が結構いる。駆逐艦より下はそもそも俺が免許の取得を許可していない。年齢的に問題が無くても、見た目的に問題があんだよ、色々と。
「イヤよ、私だって呑みたいもの」
俺がお供え物として買ってきたのは岩手の地酒『あさ開 金賞授賞酒』……1本1万2000円もした高級な奴だ。20年来れなかったお詫びも込めて奮発したんだぞ!?
「それ
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