125部分:第八話 心の闇その十五
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第八話 心の闇その十五
「だが。芸術はだ」
「それは」
「どうなのでしょうか」
「芸術は全てを浄化する。魂を高めるものだ」
芸術を解さぬビスマルクではない。少なくとも解さぬものに対して喚きたてる様な野蛮人ではない。彼は高い教養の持ち主でもあるのだ。
「あの方はそれを愛されておられそれを残される方だ」
「ではそのまま望まれるようにですか」
「今のまま」
「しかも暴虐の方ではない」
それでもないというのだ。
「それはわかるな」
「はい、わかります」
「それはよく」
彼等もだ。そのことはよくわかっているのだった。
「血を好まれません」
「残虐もです」
「それは美徳の一つだ」
ビスマルクは遠い目にもなった。
「ドイツは。これまで多くの血が流れてきた」
これも歴史にある通りだ。三十年戦争や魔女狩りに見られる諸侯や宗教を基にした対立によってだ。多くの血が流れてきたのである。
ビスマルクはそれも学んでいた。それで言うのだった。
「それを思えばだ」
「血を好まれず芸術を愛されるあの方は」
「宝ですか」
「その愛されるものを後世に残される方だ」
バイエルン王は。まさしくそうした人物だというのだ。そしてだ。
ビスマルクはだ。そうした人物についても語るのだった。
「あの方の様な方はおられなかったが同じことをしてきた人物はいる」
「過去の歴史に」
「そうなのですね」
「そうだ、それが必ず」
どうかというのだった。
「ドイツにとっても。人間にとっても宝となるのだ」
「だからこそですか」
「閣下はあの方を」
「素晴しい方だ。そのお人柄も資質も」
どれもだという。ビスマルクは語る。
「あの方は。傷つけてはならないのだ」
「閣下、それでは」
「プロイセンは」
「少なくとも私はあの方の味方だ」
暖かい目でだ。その誓いを出すのだった。
「あの方が泉下の方になろうとも」
「その時まで」
「何があろうとも」
「そうされますか」
「そうだ。だからこそ」
今度はだ。しくじくたるものをその目に見せた。
「あの状況はよくないのだ」
「ワーグナーにも問題がありますし」
「あの男も」
「確かに彼はだ」
ビスマルクはワーグナーも見ていた。一方だけを見て判断する男ではなかった。
「呆れる程に金遣いが荒く女性に関してもだ」
「弟子の妻を奪うとは」
「そんな男ですし」
「人間性は肯定できない」
ビスマルクは言い捨てた。ワーグナーのそれについてはだ。
「全くだ」
「その通りです。しかも尊大で図々しくです」
「極めてふてぶてしいです」
それが人間としてのワーグナーであった。
「失言癖もありますし」
「偏見によりユダヤ人を嫌う様な男です」
「そういう人物です
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