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永遠の謎
123部分:第八話 心の闇その十三
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第八話 心の闇その十三

「あの方の内面はだ」
「女性だと」
「あくまで」
「御自身も気付いておられないが」
 それも言う。
「だが実はだ」
「だからこそ白鳥の騎士に憧れる」
「そうなのですか」
「そうだ。人は誰でもだ」
 今度は人間観にもなった。ビスマルクはただ政治家であるだけではない。そこには鋭く深い人間洞察がある。哲学者に匹敵するまでに。
「男性的なものと女性的なものがあるのだ」
「誰でもですか」
「それを持っているのですか」
「どちらも」
「女であっても男性的なものを持っている」
 その例えとしてある人物を出した。
「ジョルジュ=サンドの様にだ」
「あの男装のですか」
「変わった女ですが」
「変わっているがだが事実だ」
 その例えとしてのだった。
「それはだ」
「そうですか。それとですか」
「同じだと」
「そしてあの方もだ」
 ここでは話が戻ったのだった。
「ジョルジュ=サンドをそのまま逆にすれば」
「つまり男の中にある女性的なもの」
「それですか」
「それがあの方だ」
 こう話すのであった。
「バイエルン王なのだ」
「だからこそローエングリンを愛されている」
「そうなっているのですか」
「そうだ。そしてだ」
 さらに話すビスマルクだった。
「ローエングリンは実際にこの世にはいない」
「いるのはあくまで幻想の世界にですね」
「そちらの世界に」
「それに対してあの方は現実におられる」
 この矛盾がだ。深刻な問題となっているというのだ。王の中にある女性的なものと共にだ。その現実と幻想の違いがだというのだ。
「現実にな」
「だからこそ会えない」
「あの騎士にはですか」
「実際には」
「しかしローエングリンを創り出した者は目の前にいる」
 ビスマルクの言葉がここで変わった。
「ワーグナーはな」
「そうなのですか」
「だからこそあの人物がいなければですか」
「あの方は」
「私ならばいいとする」
 ビスマルクは王に対して暖かい目を向けていた。
「その程度はだ」
「しかし財政に負担が」
「しかもあの男はです」
「些細なことなのだ」
 そうだというのである。彼はだ。
「あの方の素質と素晴しさを考えれば」
「その二つをですか」
「考えれば」
「そうだ、些細なことだ」
 ビスマルクは今度は王にだ。同情する目を見せていた。そこに王はいないがそれでもだ。王のことを真剣に考え述べるのだった。
「あの方を。迷わせてはならないのだ」
「それがわかる者はミュンヘンにはいない」
「そうなのですか」
「いない。私はここにいる」
 ベルリンにだというのだ。
「そしてもう一人の方だが」
「その方とは」
「誰でしょうか」
「オーストリア皇后だ」
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