暁 〜小説投稿サイト〜
緑の楽園
第二章
第17話 ドメリア砦の戦い(2)
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
てきた。
 足が地面から浮いているかのような錯覚を覚える。
 怖い。
 視界が白んでいくのを感じた。

 足にゴツンという感触。
 それで我に返った。

「リク、大丈夫か」
「クロか……。ああ、大丈夫だ。ありがとう」

 おかげで少し、落ち着いた。
 俺は国王の少し前に出た。
 クロがそれに続き、俺の横に来る。

 ここにいる国王を助けること。自分も助かること。
 どちらも達成しなければならない。



 ついに、本陣の幕が倒された。

 まず一名、こちらに向かってくる。

 ドラマや漫画のように、立ち止まって名乗ることもなければ、無駄口をたたくこともない。
 そして隙をうかがったり、じりじりと間合いを詰めることもない。
 ただただ、止まることなく鬼の形相で迫ってくる。

 敵兵が奇声を上げて剣を振りかぶる。大振りだ。
 俺は構えた剣を、踏み込みとともにそのまま突き出した。

 首に。
 刺さった。

 敵兵の振りかぶった剣が、慣性の法則にしたがって前に倒れてくる。
 俺の肩当てに力なく当たり、乾いた金属音を立てた。

 ……人を殺した。

 いや、今は考えている暇はない。
 剣を抜き、敵兵だった肉人形を横に払った。

 その後ろから、剣を槍のように突き出さんとしている敵兵が見えた。
 そこまでは見えていなかった。
 身をかわすのは、間に合わ――。

 ドン!

 鈍い音とともに、敵兵が少し左によろけた。
 突き出してきた剣は、俺の左わき腹をかすめるように素通りした。

 敵兵の右地面に着地したのは、鎧姿の白い犬。
 クロが敵兵に体当たりしてくれたようだ。
 空振りしてつんのめった敵兵の肘に向かって、俺は剣を振り下ろした。

 腕は斬り落とせなかった。骨で止まってしまったであろう感触があった。
 敵兵はすぐに向き直り、苦痛に顔を歪めながら、剣を振りかぶった。
 ……が、そこで表情が消えた。

 その背後には、束までと言わんばかりに深々と剣を突き刺している国王がいた。

「リク、まだまだ来るぞ!」

 俺はすぐ態勢を立て直し、再び国王をカバーできるポジションを取った。
 右隣りにはクロだ。

 左隣に参謀のヤマモトが来た。
 軍師風の衣装は脱ぎ捨てている。手に持っている剣は血みどろだ。
 そして肩で大きく息をしている。

 前から一人、味方の兵士が後ろに吹き飛ばされて、転がってきた。
 血まみれだ。首が斬られており、皮だけでつながっていた。絶命している。

 敵兵が新たに三人向かってきた。
 入口近くにいた生き残りの味方兵士を一人吹き飛ばし、その勢いのまま、こちらへ――。

 三人同時は受け切れる気がしない。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ