第75話『終戦』
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どうかなーって。だってあの時・・・」
「「……」」キッ
「あ、いや、はい、何でもありません…」
北上が何かを言おうとすると、終夜と緋翼は鋭い目を向けて制す。一体何の話だろうか。先が気になる晴登だが、詮索すればただでは済まなそうだ。大人しく引き下がろう。
「とりあえず、今日はここで解散だ。もう夜も遅い。さっさと帰れ。今すぐ帰れ」
「「は、はい!」」
終夜が急かすようにそう促すので、晴登は結月を連れて帰路についた。見上げると、月が眩しいくらいに輝いていた。
*
「はぁ……」
家に戻り、両親に帰りが遅くなったことの適当な言い訳をして、晴登はベッドに倒れた。身体に残る倦怠感は未だ抜けず、横になればすぐにでも寝れそうな気がする。
そんな時、ふとドアをノックする音が聴こえた。
「…あれ、結月? どうした?」ガチャ
「……」
もう夜もふけ、電気を消していよいよ寝ようとした晴登の元に訪れたのは、どこか浮かない表情の結月だった。彼女は晴登の問いに何も答えず、そのまま部屋に入りおもむろに晴登をベッドに押し倒す。
「えっ、ちょ、結月!?」
「……ハルト」
「な、なに…?」
急展開に焦る晴登をよそに、結月は晴登の胸に頭を埋める。そしてか細い声で、縋るように晴登の名を呼んだ。
暗闇の中で、目の前のヒンヤリとしていてもどこか仄かに温かい結月の体温を全身で感じながら、晴登は何を言われるのかと心の中で身構える。
「──今日は一緒に寝て」
「え、何で…」
「お願い」
「……わかった」
その雰囲気はいつもの軽いノリとは違う。声のトーンの低さからしてそれがわかった。そう察した晴登は結月を邪険に扱うこともできず、仕方なく彼女の言いなりになる。
「──」
互いに無言の時間が続く。その間も晴登の心臓は騒がしく鳴り響いた。ただその一方で、結月の身体が僅かだが震えているのを感じる。
「……ハルト」
「なに…?」
「あのね……怖かった。すごく、怖かったよ」
「結月……」
今にも消え入りそうな結月の声。その声色からは言葉通りの恐怖を感じ取れた。みんなの前では弱った様子を見せなかった結月だが、やはり拉致されたことが怖かったのだろう。
「もしかしたら、ボクここで死ぬのかなって。そう思うと、ホントに怖かった。ハルトが助けに来てくれるって信じてたたけど、それでも怖かった。もし、もし・・・」
それ以上先を、結月が言うことはない。同時に晴登は己の弱さを悔いた。
──あの時、自分が結月を守れてさえいれば。あるいはすぐに取り戻せば、彼女をここまで悲しませ
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