第75話『終戦』
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い! 二人とも、ありがとうございました!」
そう言った瞬間、徐々に魔法陣の光が増し、次第に晴登たちの意識は遠い彼方へと消えた。
*
魔法陣が消えた途端、辺りは森らしい本来の静寂を取り戻す。だが余韻に浸る彼らにとって、むしろそれはありがたかった。
「…行っちまったか」
「アンタ、ホントにいいのかい?」
「いいんだよ。俺はこの世界が好きなんだ。これから、失ったものを取り戻さなきゃならねぇ」
長年続いた戦争による損害は決して少なくはない。それでもこの世界が好きだからこそ、それを取り戻して、また皆で笑い合う。それが一真の望みだった。
「は、あの弱っちいガキがここまで言うようになったか。人間変わるもんじゃな」
「だーかーらー、その話は無しって言ってるだろぉ!」
復興を図る二人の様子を、黄金の満月と満点の夜空が静かに見下ろしていた。
*
「う…ん」
まるで長い旅を終えたかのような倦怠感と共に、晴登は目を覚ました。そしてやけに固い寝心地、すなわち地面の上で寝ていたことを悟った瞬間、汚れも気にせず急いで起き上がる。
「あれ、ここって…」
まだ夜なのか辺りは暗く、鬱蒼と木が林立して似たような景色が一面に広がっているが、見覚えは一応ある。そう、ここは肝試しに入った森の中だった。つまり、
「帰ってきたのか……」
異世界からの回帰を体験するのはこれで二度目だが、やはりこの倦怠感は慣れるものではない。身体の傷や汚れも、今や地面で寝ていたが故の土埃のみ。
『異世界での事象は現実世界に干渉しない』
この不思議な感覚も調子を狂わせる要因の一つだ。
「んん…」
「っ!」バッ
ふと背後から掠れるような声が聴こえ、慌てて振り向く。
するとそこには、土の上で眠る結月の姿があった。いや、それだけではない。見渡せば、肝試しを行った魔術部部員全員の姿があった。
「う……あ、ここは…?」
「森の中です、部長。俺たち帰ってきたんです」
「帰ってきた……あぁ、なるほど。そういうことか。うぅ、何かまだ頭がクラクラする…」
終夜は頭を抑えながら呟いた。確かに、初めてでこの感覚はキツいものがある。歴戦の猛者気取りだが、晴登とて慣れた訳ではない。
「とりあえず、森の外に出ませんか?」
「…あぁ。一度整理しねぇとな」
晴登と終夜は全員を起こし、何とか森の外へと抜け出した。
「・・・あれだけ時間が経ったのに、こっちの世界ではまだ夜だなんて、不思議な感覚ね」
「あぁ全くだ。三浦の気持ちがようやく理解できた」
「あと、傷が治ってる
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