第75話『終戦』
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ったの」
「もう終わったことですし、いいですよ。良い経験と思えば」
終夜がぶっきらぼうに言った。そこには、初めて婆やと話した時ほどの棘は無い。魔王軍との戦争を通して、何か感じることがあったのだろうか。尤も、それは晴登には知りえないことなのだが。
「ちなみに、どうやって帰るんですか?」
「そこは儂に任せよ。心配せずともよい。それよりも・・・」
言葉を途中で止めて、婆やは振り返る。その視線の先には一真が映っていた。
「お前は、どうするんじゃ?」
「……」
短い問いだが、一真にとっては重く苦しい決断となるだろう。すなわち、「裏世界に留まるか、表世界に帰るか」だ。
そも、彼が住む世界はここではない。そして、彼がこの世界に居る理由も もはや無い。それでも彼にそう訊くのは、彼があまりにもこの世界に留まってしまったからだ。
「お前がここに来て随分と経ってしまったが、今一度ハッキリせねばなるまい。お前の答えを聞かせておくれ」
「俺、は・・・」
浮かない表情のまま、口を動かす一真。しかし、中々その先を言い出せずにいる。晴登たちには、ただその様子を眺めることしかできない。
「俺は・・・ここに残る。どうせ、戻ったところで何もねぇんだ」
それが、一真の決断だった。これに反論を上げる者はいない。何せ彼が決めたのだ。むしろ口出しする方が野暮というもの。
「……そうか。では、彼らを元の世界に帰すとしよう」ヴン
そう言うと、婆やはすぐさま魔法陣を立ち上げる。展開が早い気もするが、長居する理由もない。晴登たちは静かにその陣に入った。
これで、長かった戦いがようやく終わりを告げる。正直、異世界はもう懲り懲りだ。日常とかけ離れすぎていて、異常に疲労が溜まってしまう。帰ったら、皆とワイワイ楽しい日常を送りたい。
──おっと、そういえば言い忘れていた。
「一真さん」
「うん?」
「結月を助けてくれたこと、感謝してます。俺は、この世界で一真さんに会えて本当に良かったです。すごく頼れる存在でした」
「……っ」
晴登が本心からの言葉を伝えると、一真は一瞬だけ驚いた表情をした後、安心したように微笑んだ。その瞳には小さな光が見える。
「あぁ、あぁ。俺もお前らに会えて良かったよ。俺の分まで、向こうの世界で頑張ってくれよ」
「…そんな寂しいことを言わないで下さいよ。一真さんも、頑張って下さい」
「けっ、最後まで言ってくれるじゃねぇか」ハハハ
一真は目元を拭うと、快活に笑った。そして満面の笑みを浮かべたまま、彼は親指を立てる。
「じゃあな。また会えた時はよろしくな」
「は
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