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戦国異伝供書
第十話 朝倉攻めその十

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「ありませぬ」
「だからですな」
「はい、この度の戦も」
「我々が絶対に勝てるか」
「それを考えますと」
 それはというのだ。
「やはりです」
「負けることもですね」
「有り得ます」
「だからですな」
「何が起こるかわかりませぬが」
 しかしというのだ。
「やはりです」
「いざという時の備えは、ですな」
「それは既に出来ておりますし」
「近江の南を固めている」
「若し何かありましても」
 軍勢を退く時になってもというのだ、雪斎が今危惧しているその時になっても。
「無事に都までです」
「我等は戻られますな」
「はい、すぐに戻れまする」
「その道も整えていますし」
「無事に都まで我等も十万の兵も戻り」
 そしてというのだ。
「態勢を立て直してです」
「再び戦うこともですな」
「出来まする」
「ですな。それでは」
「はい、いざという時の備えもしておりますし」
「それ故に」
「明日も越前に向かいましょう」
 雪斎は星の動きに不安を感じていたがそれでもだった、彼もまた越前に向かっていた。そして無事に近江から越前に入り。
 越前の入り口にある金ヶ崎城、織田家にとって第一の目標を攻め落とした。そのことが終わってからだ。
 織田家の家臣達は入城した金ヶ崎城の中で酒盛りをしていた、彼等にとっては幸先良い勝利を収めることが出来た。
 それでだ、柴田も諸将に言っていた。
「いい感じで勝ったのう」
「うむ、確かにな」
 その柴田に佐久間が応えた。
「まずはよい勝ち方であった」
「そうであるな、ではな」
「これよりこの城を足掛かりにして」
「越前を攻めていくことになる」
「このまま一乗谷に一直線じゃ」
 こう言ったのは森だった。
「そこでおそらくな」
「宗滴殿じゃな」
 佐久間がこの名前を出した、そうしてその顔を険しくさせた。
「やはりな」
「そうじゃ、あの御仁を倒さぬとな」
「我等の勝ちはないな」
「朝倉家は事実上あの方でもっている」
「まさに朝倉家の柱じゃ」
 それが宗滴だというのだ。
「だから」
「それでじゃな」
「まずはな」
 何といってもというのだ。
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