【月白(つきしろ)の瞳】
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た表情とその言葉に、ハナビは思わず吹き出してしまう。
「いえ、本当の事を述べたまでですが」
「ふふっ、ヒナタ姉さま、素直にネジ兄さまの言葉を受け取っておきなよ」
「う、うん……。(私も、そのうさぎのようになれたら──)」
「この話には続きがあり、『うさぎを憐れんだ老人が、その焼けた皮を剥いで月に映し、皮を剥がれたうさぎは生き返る』という説もあります。だから、月の白い部分ではなく、黒い部分がうさぎなのですよ。では、なぜ餅をついているのかというと、『うさぎが老人のために餅つきをしている』とか『うさぎが食べ物に困らないように』という説がありますが、中秋の名月が豊穣祝いであることを考えると、たくさんの米がとれたことに感謝する意が込められているようです」
ネジが再び語ってみせ、ハナビはそれに対し素直な感想を述べる。
「じゃあわたし達の眼は、うさぎを映し出す月の白い部分ってことかな」
「まぁ、あながち間違ってはいないかもしれませんが……」
「ネジ兄さん……いざという時は、私のこと食べて下さいね」
割と真剣な表情のヒナタに気後れするネジ。
「は……? 急に何を言い出すんですヒナタ様」
「あ、姉さまずるい! 食べるんだったらわたしにしてよネジ兄さま」
「ハナビ様まで……。二人共、冗談も大概にして下さいね」
呆れた振りをしてネジは溜め息をついたが、それは自分に何かあった時にその自分に身を捧げるくらいの気持ちを二人の従妹は持ってくれているのだと知って、内心有難いと感じ、自分自身も分家としてだけでなく日向一族の仲間、家族として従妹の二人を守っていきたいと思い、白く煌々とした月を再び仰ぎ見、月白の瞳を細めて微笑んだ。
《終》
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