【月白(つきしろ)の瞳】
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誤魔化すように話題を変える。
「そう、いえば……お二人は“月うさぎの伝説”をご存知でしたか?」
「え、そんなのあったっけ?」
ハナビは首を傾げ、ヒナタも同様に知らない様子だったのでネジは静かな口調で語り出す。
「──昔、あるところにウサギとキツネとサルがいました。ある日、疲れ果てて食べ物を乞う老人に出会い、3匹は老人のために食べ物を集めます。サルは木の実を、キツネは魚をとってきましたが、ウサギは一生懸命頑張っても、何も持ってくることができませんでした。そこで悩んだウサギは、『私を食べてください』と言って火の中にとびこみ、自分の身を老人に捧げたのです。……実は、その老人は3匹の行いを試そうとした帝釈天という神様で、帝釈天はウサギを哀れみ、月の中に甦らせて、皆の手本にしたのだそうです」
「へぇ……そうなんだ。ネジ兄さまは、いつそれを知ったの?」
「……父から教わったのを何となく覚えていて、後になって自分で調べて覚えました」
「そう……だったんですね」
ヒナタはネジの話に俯き、ハナビはふと思った事を口にする。
「いざそうなったら……意味合いは違うとしてもわたしもウサギみたいに、身を捧げられるかな」
「あなたがそうする必要はないのでは? その役割を担うのは……、分家である俺でしょうから」
月明かりの元、ネジは無表情だった。
「……やめてよそんなの。もしそうなったとしても、わたしはネジ兄さまを身代わりにするようなことなんて絶対しないから」
その言葉に偽りのない澄んだ月白(つきしろ)の瞳で毅然と述べるハナビに、ネジは瞳を閉じて微笑を浮かべる。
「フ……次期当主として甘いですね」
「甘くて結構だよ。……それに、日向の次期当主はわたしじゃなくてネジ兄さまが相応しいから。現当主の父上だって、そう思ってるよ」
「……どうなのでしょうね」
白く煌々と輝く月を微笑したまま仰ぎ見るネジ。
「───??」
ネジとハナビのやり取りを聴いているしか出来ず、独り置いてけぼりにされたように感じてしまったヒナタは、不意に堪えきれなくなって涙をはらはらと流す。
「……ヒナタ様、どうしました?」
「姉さま……大丈夫?」
「ご…めんなさい、私……私は、大丈夫だから……」
従兄と妹に心配され、ヒナタは申し訳なくなって着物の袖で涙を拭う。
「──涙に濡れたその瞳、月明かりの元では煌めいて見えますね」
「……え?」
ヒナタはきょとんとして従兄を上目遣いで見つめ、一瞬何を言われたか分からなかったが見る見る頬を赤らめる。
「ぷっ…、なにそのキザみたいな台詞……!」
ネジの真面目くさっ
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