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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十八話 民間の愁ふるところを知らざつしかば
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うか」
 平川も釣られて軍服をまとっていた時のそれが滲みはじめている。秘書官は互いに剣呑なものを心中から引きずり出してしまったことに気づいたのか、自嘲めいた笑みを浮かべて答えた
 
「貴方と協力できないか様子を見る為に」「協力?」

「あの連盟とやらがどのような騒動を巻き起こすのか分かったものではありませんからな、今すぐどうこうなどとは当局としてもやる気もありませんが予防措置が必要なのです」

 ――弓月伯爵は警保局出身者だ。天領の運営と警察への衆民流入を利用して権力地盤を固めている。その警護を兼ねた秘書官という事は――そういう事か。
「風聞には風聞で対抗するのも手です。アレが大衆の皮をかぶった無責任なお調子者共を盾にする以上、内務省(われら)が公然と介入すると余計に自体が悪化しかねない」
 要するに角が立たない監視役兼世論操作に使わせろという事だ。
「えぇまぁ理屈は分かりますが――私が取り込まれるとは思っていらっしゃらないのですか?」
「えぇまぁそれも想定しないといえば嘘になりますが――可能性は低いと思っていますよ」

「それは何故でしょうか」

「貴方が国を愛しているかどうかは関係ありません。ですが我々と同じく愛国心を語る人間達には失望しておられる」
 平川はもう少しで声をあげて笑いそうになった。しばらくは給金のタネに困らないだろう事を確信しながら。



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