第二章
第15話 決意
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は、陛下を守って死ななければならぬということだ」
そう言うと、将軍風の女性は俺の肩から手を離した。
「オオモリ・リク。どうか、陛下を頼む」
俺に対して深々と頭を下げた。
そして女性は俺から視線を外すと、今度はクロに対して跪き、祈った。
「陛下を、宜しくお願いします」
……。
俺は外堀が完全に埋められたのを感じた。
話が重すぎだろう。
……いや。
よく考えたら、当然なのかもしれない。
先代国王が急死したのが九年前。当時は国中がこの国の将来を心配しただろう。
跡を継いだ幼少の国王はたまたま聡明であり、現在は自分で国政をおこなえるまでになっている。
だがそれでもまだ十二歳だ。やはり今の将軍達から見ても危うさがあるはず。
謁見の間で怖い顔をしていたオッサン達だって、本当は国王の身が心配でたまらないはずだ。
……だめだな。
さっきまでの考えは捨てなければならないと思った。
おそらく、俺は本能寺のヤスケにあやかることは許されない。
ヤスケは確かに、本能寺の変を生き延びた。
そして、二条城に居た信長の子、信忠に事件を報告するという重要な仕事をした――テレビではそう紹介されていた。
しかし彼としては、本当は信長の命を救いたかっただろう。
その意味では、彼は決して本懐を遂げたとは言えないのだ。
万一の事態になったとしても、俺はヤスケになってはダメだ。
負け戦になろうが、本陣まで崩されようが、あの国王は死なせてはならない。
そして、俺も死なずに生き延びる。
そこまで出来て、初めて及第点である気がした。
***
「まあ気持ちはわかるがな。怒るなよ」
「怒ってないですよ、陛下」
午後、国王がまたこちらの部屋に来ている。
こんなところでのんびりしていて良いのだろうか。
このあと軍議があると聞いているのだが。
「お前は嘘が下手そうだからな。昨日の夜も、『別に怒ってなかったですけど』などと言っておいてプンプンだっただろう」
「今は本当に怒ってないですよ?」
「ということは、やっぱりあのとき怒っていたわけか」
おい。
「陛下、会話に罠を仕掛けていると、そのうち会話に応じる者がいなくなると思うんですけど?」
「あはは、そうだな。気を付ける。お前は反応が面白いから、つい」
国王はイタズラっぽく笑った。
この笑顔だけを見ると、普通の子供だ。
国王は俺と一緒にベッドに座っている。ポジションは昨日同様、俺の左隣。
左手でクロの頭を撫でているのも昨日と同じ。右腕で俺の左腕と組んでいるのも同じだ。
腕組みが好きなのだろうか。この人は。
国王は
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