巻ノ百五十三 戦の終わりその六
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「よいな」
「はい、右大臣様は」
「見てもな」
「見なかったことにするのですな」
「そうせよ。そしてあの者達にな」
「お任せしますか」
「約束したのじゃ」
幸村、彼にというのだ。
「だからな」
「その様にして」
「任せよ、わかったな」
「はい」
服部は家康にすぐに答えた。
「その様に致します」
「このことは竹千代にも言う」
秀忠にもというのだ。
「もう幕府はじゃ」
「右大臣様は死んだ」
「そして国松殿もな」
彼もというのだ。
「切った、ではな」
「はい、その様に」
「木下家から出てもな」
「国松様ではないですな」
「そういうことでよいな」
「国松様のお顔はわかっていませぬ」
実は大坂でも顔を見た者は僅かだ、それでその顔を知っている者は幕府にもいないのだ。常高院位しか知っていない。
「では」
「それでよい」
「わかり申した」
服部は国松のことにも答えた。
「その様に」
「そうせよ、そしてわしはな」
「最後の一仕事をされて」
「世を去ろう、もう思い残すことはない」
満足している顔でだ、家康は述べた。
「最後の戦には負けたがな」
「それでもですな」
「うむ、思い残すことはじゃ」
それはというのだ。
「もうよい」
「満足されておられますか」
「これだけ満足して死ねるとはな」
まさにというのだ。
「最高の気分じゃ、ではな」
「そうですか。では」
「大往生しようぞ」
そうして死ぬというのだ。
「そうするぞ」
「畏まりました」
「では半蔵」
家康はあらためて彼の名を呼んだ。
「十二神将達に他の戦った者達にじゃ」
「褒美をですか」
「出す、内密であるがな」
それでもというのだ。
「出そう、お主にもじゃ」
「有り難きお言葉」
「この度の戦で褒美は出すが」
「処罰はですか」
「せぬ」
一切という言葉だった。
「そうするぞ」
「そうされますか」
「皆充分戦った」
だからだというのだ。
「遅れも卑怯未練もなくな」
「それ故に」
「誰も罰さぬ」
一切という言葉だった。
「そうするぞ」
「わかり申した」
服部も応えた、そしてだった。
駿府で戦った者達は内密にであるが褒美も貰い誰も罰されることはなかった。そして戦の後始末も終わってだ。
家康は本多正純にこう言った。
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