116部分:第八話 心の闇その六
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第八話 心の闇その六
「オーストリア軍の司令官です」
「それに」
「それはお断りしよう」
それについてはだ。王はすぐに述べた。
「司令官はな」
「しかし陛下」
「それはです」
彼等もまた、だ。顔を曇らせて彼等に言うのだった。
「お断りすることは」
「かなり」
「いや、それでもだ」
無理だと言われてもだというのだ。彼はだ。
「お断りする」
「しかし。それでは」
「オーストリアとの関係が」
「かなりこじれますが」
「私でなくともよいのだ」
少し聞いただけではだ。逃げと取れる言葉であった。しかし王はここでは逃げていなかった。個人としては層であったかもしれないが王としてはであった。
「それはだ」
「陛下でなくてもよいとは」
「いえ、それは」
「幾ら何でも」
「むしろ私であれば」
王はだ。考える顔でこうも言った。
「後々不都合なことになるかも知れない」
「まさか。それは」
「そんなことはないかと」
「そうです」
彼等は王の今の言葉は否定しようとした。彼等の見えるその中での否定だった。
「むしろそれをされないと」
「今後厄介なことになりませんか」
「オーストリアとの関係が」
「悪化する恐れがあります」
「それはない」
王はオーストリアとの関係悪化についてはこう言って終わらせた。
「バイエルンはオーストリアにつくのだからな」
「それでだと仰いますか」
「それでオーストリアとの関係は悪化しませんか」
「今後は」
「確かにプロイセンとオーストリアの対決は避けられない」
そしてだ。王はそれは何なのかも語った。
「ドイツの内戦はだ」
「内戦ですか、これは」
「両国の対決は」
「ドイツのですか」
「南北の内戦だ」
まさにそれだというのだ。
「三十年戦争、オーストリア継承戦争、七年戦争とあったが」
「そういったものと同じですか」
「過去の戦争と」
「そうなのですか」
「それぞれ事情は違うが内戦だ」
そのドイツのだというのである。
「神聖ローマ帝国、即ちドイツのな」
「そして今回のプロイセンとオーストリアも」
「内戦ですか」
「しかしこの内戦は」
どういったものであるのか。王はそれも把握していた。王は現実を見てはいないと思われていた。しかしそれを見ていたのだ。醒めた目でだ。
「過去の内戦とは違う」
「何処が違うのですか」
「では」
「分裂の為の内戦ではなく統一の為の内戦だ」
それだというのだ。
「ビスマルク卿はドイツの統一を目指しておられるのだ」
「小ドイツ主義による、ですね」
「プロイセンによる」
「第二のドイツ帝国だ」
それだというのである。
「神聖ローマ帝国に次ぐな」
「第二のですか」
「ドイツ帝国ですか」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ