巻ノ百五十三 戦の終わりその五
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「そしてもうです」
「天下に出ることはないか」
「右大臣様をお守りして」
家康に今約束した様にというのだ。
「そうさせて頂きます」
「そうか、わかった」
「その様に」
「ではな。後は薩摩で武芸に励むか」
「修行を積みそして」
「お主の道を歩んでいくか」
「武士の道、果たして歩みきれるかわかりませぬが」
その果てにというのだ。
「歩んでいきまする」
「その道、しかと歩いていく様にな」
「最後の最後までそうしていきまする」
「その言葉わしに約束する言葉か」
「それがし自身にも」
これが幸村の返事だった。
「そうした言葉です」
「そうか、よい考えじゃ」
「そしてそのよい考えを」
「決して忘れぬ様にな」
「そのお言葉忘れませぬ」
決してとだ、幸村は答えた。
「それではこれで」
「達者でな」
家康は最後は笑みであった、その笑みで己に頭を下げた彼に応えた。
服部は部屋を後にする幸村に無言で頭を下げて別れの挨拶とした、幸村は彼にも挨拶をしたうえで部屋を後にした。
そしてだ、部屋を出るとだった。
彼等がいた、幸村はその彼等に微笑んで告げた。
「戦は終わった、戻るぞ」
「父上、勝ち鬨は」
大助はその父に確かな顔で問うた。
「どうされますか」
「それはよい」
「それは何故でしょうか」
「既に我等は心の中であげたな」
その勝ち鬨をというのだ。
「そうであろう」
「はい、確かに」
「だからじゃ」
「この度は」
「それはよい」
こう言うのだった。
「そのうえで胸を張ってな」
「帰りますか」
「そうするとしよう、それでよいな」
「はい」
大助は微笑んだまま父に答えた。
「それでは」
「帰るぞ」
幸村は居並ぶ者達に告げてだ、そしてだった。
彼等は駿府城から姿を消した、服部は彼等の気配が城から完全に消えたのを確認してから家康に話した。
「もうどの方もです」
「城からじゃな」
「去られました」
「そうか。風の様に去ったのう」
「左様でありますな」
「まさに風じゃな」
家康は微笑みこうも言った。
「あの者達は」
「特に真田殿は」
「そうじゃな、それではな」
「真田殿達は」
「追わぬ、好きな様にさせよ」
「その道をですか」
「歩ませてやれ」
幸村達にというのだ。
「そうさせてやれ」
「お約束通りに」
「うむ、そしてお主達も薩摩に入ってもな」
それでもというのだ。
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