30話:兄貴の独白
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況でございます。
現在、クレメンツ様の派閥に属していた者たちの拘禁が進められており、恐れ多いことながら、行く末に絶望したものが恐れ多いことをする可能性もございますので、落ち着くまでは近衛警護の下、この屋敷にて待機してほしいとのことでした。」
「左様であったか。グリンメルスハウゼン、苦労を掛けたな。それにしても兄弟で帝位を争うことを望まず、放蕩者として過ごしていた私に帝位が回ってくるとは、皮肉な話じゃな。帝国の状況を見たとき私の手には終えぬと思ったからこそ下りたのだがな。」
ザイ坊の祖父、レオンハルト殿も戦死した第二次ティアマト会戦。それ以前から敵将アッシュビーとの会戦で多くの軍部貴族が戦死していた。あの会戦で軍部にも門閥貴族が浸透し、帝国は彼らにむしゃぶりつくされると思ったが、兄と弟が派閥争いをした影響で、軍部貴族は力を取りもどし団結する時間が得られたが。
「兄弟が争ったおかげで500家近い門閥貴族が消えることになる。私が仮に皇帝になったところで彼らに強くは出れぬ。派閥争いに参加しなかった門閥貴族を黙らせる材料も私にはない。そして、これはと思う人材を抜擢したところで、今回の騒動の仕掛け人と思われかねぬ。ザイ坊なら、帝国を蘇らせるまではできずとも、立て直すところまではやってくれそうだが。」
グリンメルスハウゼンは悲しそうな表情でうなずいた。
「かの者の力量ならば、むしろ蘇らせる所までできるかもしれませぬが、殿下に何かあればルントシュテット家は門閥貴族から総攻撃を受けることになりましょうな。そうなれば軍部と政府・宮廷で内戦となるやもしれませぬ。仮にアマーリエ様がザイ坊と似合いの年頃であればまだ可能性はございましたが......。」
「もともとどうにもならぬと思って下りたのだ。今更虫のいい話もあるまい。以前あの者に言われたのだ、家に縛られてお互いしたいことができない、私とザイ坊は同志だとな。あやつめ、何とか公務にかこつけて私のしたかったことを少しでもさせようとしてくれたのだろう。レオの件しかり、ウイスキーのブレンドの件しかり、火入れ式しかり。振り返ってみれば勘当寸前の放蕩者であったことを考えれば良き思い出を持てたものよ。それに表立って報いてやれぬのが今更ながら心残りだが。」
「ザイ坊も本心は軍ではなく自由に商売をしたがっておりましたからな。フェザーンにでも生まれておればどんな豪商になっていた事やら。とはいえ、乳母殿のことは不幸でしたが、祖母マリア様に溺愛されておりました。なんだかんだ言いつつもルントシュテット家の力になれること悪くおもってはおりますまい。」
グリンメルスハウゼンも表情がすこし明るくなった。あやつの事を可愛く思っているのは、マリア殿だけではない、グリンメルスハウゼンも私も自分の子供であったり弟であるか
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