28話:遊覧
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で、こちらにとってもメリットがあった。
やんごとなき方々は満足するし無事故。無難に裁いたつもりだったがそれもあって俺は来月から特別候補生中尉待遇という身分になる。士官学校在籍の中尉って何なんだろう。もう気にしないことにした。俺の特別扱いは嬉しい事ではなかったが、恩恵と言う訳ではないがメルカッツ先輩も来月から中佐に昇進する。こっちは素直に嬉しかった。先輩は得意ではない事務仕事も頑張ってくれていたし、やんごとなき連中の対応も慣れない中でこなしてくれた。昇進する理由は十分にあると思う。
そんなことを貴賓席で考えていると、ファンファーレがなり、近衛兵の前触れが聞こえてきた。兄貴が入場してきたようだ。皇族の挨拶が始まる。
「皆の者、大儀である。今回のイゼルローン要塞の建設は皇帝陛下の勅命である。とはいえ前例がない大事業であり、様々な困難もあったと漏れ聞いておる。皇帝陛下も皆の尽力をお喜びであられた。本日からこの施設で生産が始まる超硬度鋼はイゼルローン要塞の外壁で主要な役割を果たすと聞いている。私としても、このような大事業の一端ではあるが火入れ式という節目で大役を担えること、名誉に思っておる。計画では要塞建設は折り返しの段階にあると聞く。完成まで、皆の奮闘を期待しておる。」
おお、さすが皇族だよ。観衆の前で話すのって特殊なスキルだと思うんだけど、兄貴けっこう様になっている。俺は自然に拍手していたし、周囲も拍手していた。拍手が納まったタイミングで、起動スイッチを兄貴が押し、火入れ式は終了だ。このあと場を変えて簡単なパーティが予定されている。初回ロットの超硬度鋼とスーパーセラミックはオーディンに運ばれて新無憂宮殿に設置されるイゼルローン要塞のミニチュアオブジェの材料となる予定だ。
明日から建設中のイゼルローン要塞に御用船で向かい、現場の視察だ。おばあ様が納得してくれるといいけど。
宇宙歴763年 帝国歴454年 4月上旬
イゼルローン要塞建設宙域 御用船
マリア・フォン・ルントシュテット
孫が作らせたという要塞視察用のシャトルに乗り込み、視察を終えて戻ってきた私は、休憩も兼ねてラウンジでお茶を楽しんでいた。正直、勅命とは言え本来なら士官学校に通うはずの愛孫をはるか遠いアムリッツァ星域に追いやった原因のイゼルローン要塞。ザイトリッツが関わっているという嬉しさと孫との時間を奪われた憎さとが混じりあい、複雑な心境だったが、肉眼で実際に見てみると、軍事もは疎い私でさえ、これが大事業であり関わった者たちは歴史に名が残るであろうことは理解できた。女の私ですら、なにか心に来るものがあった。殿方なら猶更感じるところがあるに違いない。同席されたフリードリヒ殿下もグリンメルスハウゼン子爵も釘付けになっていたし、なにやら興奮したご様子だった。レオンハ
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