二十二匹め
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「きゅぅ」
「じっとしてるんだぜ?」
「きゅ!」
ボーデンはシラヌイを胸の谷間に入れたまま、王宮に来ていた。
振り向く侍女や役人が何度も振り向く。
「きゅー…」
「大丈夫。シェルム先生はこっちの方には来ないから」
ボーデンが向かう先は、自分が与えられた研究室だ。
十名の国家錬金術師と十名の宮廷魔導師は王宮内に研究室を与えられる。
錬金術と魔導研究の成果は生産と軍事…国力に直結する。
国家がなんとしても守るべき物だ。
嘗てフライハイト建国のはるか昔、環状大陸フローティア統一を目指したある国は、たった一人の魔導師の裏切りによって滅亡したのだ。
その魔導師の名は、今も英雄として語り継がれている。
そして王候貴族はそのような事が起こらぬよう、気がけている。
「そら、着いたぞ」
ボーデンが入った部屋は、おどろおどろしい部屋だった。
動物の首や臓物が液体に入れられ、カプセルの中に浮いている。
「気持ち悪いなら目を瞑っておけ」
「きゅぅー……」
刺激が強かったようで、シラヌイはガックリと項垂れていた。
「ま、全部エリクシールの材料だ。熊の肝、蛇の毒…その他諸々のちょっと言えない物」
ボーデンが実験室の奥の扉を開けた。
そこは普通の書斎だった。
一つだけあるソファーに、シラヌイを置く。
「タマモ様を呼んでくる待ってろ」
「きゅー…」
少ししてボーデンがタマモと共に戻って来た。
「きゅ?」
シラヌイはボーデンと共に入ってきたドレスの女に疑問符を浮かべた。
「この姿かの?」
「きゅ!」
「コレが儂本来の姿じゃ」
そう言い放ったタマモの姿は『傾国』と形容すべき物だ。
金糸を束ねたような金髪。
少し鋭さを覚える美しい顔立ち。
男の欲望と女の理想を詰め込んだような体つき。
そして背後に見える巨大な九本の尻尾。
「お主と過ごすには童の姿が都合がよかったのでな」
「きゅー」
対するシラヌイの視線が注がれるのはは豊満な胸でもドレスから覗く生足でもない。
「なんじゃ。きになるのか?」
「きゅ!」
「ちこう寄れ」
シラヌイはソファーから飛び降り、タマモの尻尾に飛び込んだ。
「お主は本に好きじゃのう」
「きゅー…」
尻尾の中からくぐもった鳴き声が聞こえてきた。
「タマモ様」
見かねたボーデンがタマモを呼ぶ。
「おお、忘れておった。エナジードレインの件じゃったな」
「はい」
「心配は要らぬ。シラヌイならば直ぐに制御を覚えよう」
「え? 封印するんじゃ……」
「してどうする? 練
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