第二章
第12話 初めてのお参り +登場人物紹介
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神社は首都のやや北西。独立した小高い丘の上にあった。
「いい景色だな」
鳥居の前にある展望台からは、この国の首都が一望できる。
西から流れてくる大きな川と、その河口デルタに位置する城。
城は川の水を利用している堀に囲まれている。そして、堀の内側には立派な石の城壁。
城壁に囲まれたスペースには、俺が知るような和風の天守閣はない。
城の中央に見えるのは、おそらく木造だが洋風であり、巨大な教会のような建物。
外見はシンプルで城らしくはないが、厳かで、かつ悠揚たる姿だった。
足元で広がる芝生の緑とのマッチングも見事だ。
前にテレビ番組の世界遺産特集で見た、ヨーロッパ某国の平和教会を思わせる。
美しい。
芸術の心得がまったくない俺でも、そう思えた。
そして、城を中心に広がる施設や住居。
背の高い建物はないが、圧巻の景色だ。
「あー。いい気分だ」
「そうだな」
「お前も景色がキレイとか、そういう感情はあるのか」
「ある」
犬は色が判別できないとか、近視で遠くは見えないとか、そのようなことを聞いたことがあったが。
一応風景を評価することはできるようだ。
「さて、気分がいいうちにお参りするか。それが終わったら宿探しをしよう」
「わかった」
俺達は鳥居をくぐった。
ふむ……。
鳥居の中の景色は、限りなく俺が知る神社に近いものだった。
境内はとても広い。全体像がつかめないほどだ。
首都にある神社ということもあり、お参りに来ているとおぼしき人や、散歩とおぼしき人が結構いる。
そのまま歩いていると、予想はしていたが、路上で有名歌手がゲリラライブをおこなったような騒ぎになった。
クロは知らない人達に次々に話しかけられ、両手を合わせて拝む人や、涙を流す人までいた。
「いや、違いますから」と説明するのは大変だった。
神社の奥まで着いた。本殿がある。
そして本殿の横には、少し小ぶりの祠。
「――!」
そこに置いてある、白い像。
紀州犬だ……。
毎日掃除されているのだろう。目だった汚れもなく、きれいな白色をしていた。
これは騒ぎになるのもうなずける。確かにクロにそっくりだ。
紀州犬は、この国には基本的にいないらしい。
「基本的には」って何だよ? と聞いたときには思ったのだが。俺のいた日本の紀伊山地にあたる場所で、山奥にひっそり棲息しているという言い伝えがあるのだとか。
もちろん言い伝えなので、実際に見た人はいないのだろう。
それが現れたら騒ぎになるのは仕方がない。ツチノコが見つかるのと同じようなものだ。
「クロ、どうだ」
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