第二章
第12話 初めてのお参り +登場人物紹介
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今、俺達は首都行きの乗合馬車の中である。
地図には、首都はセドティアという聞いたこともない名前が付いている。やはりトウキョウではなかった。
俺のいた日本でいえば、川崎市あたりの場所だ。
こちらとしては、乗合馬車で行ける距離に首都があって助かる。だが、埼玉のあたりに引かれている北の国との国境線に対し、あまりにも近すぎることが気になった。
突然大兵力で攻め込んでこられたら危ないのでは? と思ってしまう。
まあ、余計なお世話か。
「いやあ、しかしなあ。あんなに泣かれるとは思わなかった。嬉しいけど、まいっちゃったな」
「……」
「用事が発生してすぐ戻るかもしれないし、元の日本に帰る方法が見つかったとしても一旦挨拶しに戻るだろうから、遅かれ早かれまた会えるのに。
なのにみんなビービ―泣くんだからなあ。カイルの奴とか俺の服で鼻水拭くから、裾がカピカピになっちまったよ」
「……お前はさっきから誰に話しかけているのだ」
「ん? クロ、お前にだよ」
「そうか……。続けろ」
うわ怖。
しかし半年のあいだ孤児院で鍛えた俺のメンタルは、こんなことではくじけない。
「でも孤児院の院長も優しいよな。特別な措置として、俺の孤児院での籍は残しておいてくれるってさ。
万が一、元の日本に帰る方法が存在しなかった場合は、院生としての復帰が許可されるらしいよ。ありがたいことだよ」
「そのような話をしていたのか」
「あ、そっか。お前にきちんと通訳をしていなかった。ごめんな」
「気にするな」
クロは本当にどうでもよさそうな感じに言う。
「そういえば。ジメイにさ、首都に着いたらまず神社に行けって言われているんだけど。どうしようかな」
ジメイからは、まずは神社でお参りをしたほうがよいと言われた。
例によって「神託があったから」とのことなのだが、理由がそれだけなので、あまり気が進んでいない。
クロは少し沈黙したのち、答えた。
「行くべきだ」
「お。珍しく意見を出したな。根拠は?」
「私が確認しておきたいからだ」
ああ、そうか。
クロそっくりな犬が祀られているのだった。
あの町では、結局一度も神社に行かなかった。
ジメイには一度お参りを、と言われていたが、結局その機会はないままだった。
そこまで興味がなかったというのが最大の理由だ。
俺は初詣には毎年行っていたが、神仏の類はまったく信じていない。俺のいた日本でよくあるパターンだ。
だが、ここでクロ本人が行って確認したいのであれば、行くべきだろう。
「つまり、いい加減に確認させろやコラ、というわけだな」
「そうだ」
あ、はい。
「さて、そろそろ首都に着くな……」
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