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レーヴァティン
第七十話 セビーリアに向かいその三

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「俺っちはな」
「この船ではだね」
「読む本ないんだよ」
 芳直は剛に憮然とした顔で答えた。
「だからこうしてな」
「釣りをしているんだ」
「そうしているんだよ」
「そうなんだね」
「ああ、飲んでばかりでもな」
 それでもというのだ。
「身体に悪いしな」
「アル中になるからね」
「そうなるつもりもないからな」
「お酒は飲まないで」
「夜だけだよ」
 四六中飲むことはしないというのだ。
「そうしてるんだよ」
「成程ね」
「鍛錬かな」
「釣りだね」
「それで時間を潰すさ」
 今回の船の旅の間はというのだ。
「前の川での旅の時はよかったぜ」
「ああ、あの時は面白い小説あったね」
「冒険ものあっただろ」
「北欧神話の系統のね」
「神様の物語がな、それ読んでたけれどな」
 今回の船旅ではというのだ。
「哲学書ばかりでな」
「君は読まないから」
「だからだよ」
 それでというのだ。
「こうしてな」
「釣りをしているんだね」
「暇な時はこれに限るさ」
 こうも言う芳直だった。
「水辺限定だけれどな」
「時間を潰すにはもってこいなんだ」
「ああ、じゃあ釣れたらな」
 その時はというのだ。
「その魚調理しような」
「うん、楽しみにしてるよ」
 剛は芳直に笑顔で応えた、そして彼の釣りを見ていたが。
 かかった、それで芳直はすぐに釣り上げたが。
 釣れたのは平べったく尾が長くしかもその付け根に鉛筆の様な棘がある魚だった、芳直はその魚を見て顔を顰めさせた。
「ああ、ちょっとな」
「エイだね」
「エイはな」
「調理の仕方に癖あるからね」
「煮凝りにするからな」
 そうして食べるからだというのだ。
「ちょっとな」
「うん、釣ってもね」
「あまりな」
「しかもこのエイはね」
「ああ、アカエイだな」
 芳直は尻尾の付け根のその大きな棘を見て言った。
「これは」
「危ないよ」
「あの棘に毒あるからな」
「若し刺さったら」
「大変だな」
「死ぬ場合もあるからね」
「こっちの世界でもな」
「だから危ないからね」
 アカエイ、もっと言えばその毒針はというのだ。
「放してあげようよ」
「そうだな、釣ったけれどな」
「お刺身には出来ないしね」
「エイの刺身、か」
 剛の今の言葉にだ、芳直は微妙な顔になって返した。エイは手元に寄せて毒針に触れない様にして口元の針に手をやっている。
「そういえば聞かないな」
「鮫のお刺身もね」
「エイと鮫は同じ仲間だからな」
「近いよ」 
 同じ軟骨魚である、尚サカタザメやノコギリザメという種類は鮫という名前だが実はエイに分類される。
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