第10話 決着
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「あ〜、もう疲れましたぁ……限界ですう」
フィールドの外。
魔法を削り切られ、疲労困憊のプラムがそうこぼした。元より魂の減衰により魔法の連続使用が危ういプラムだ、言うのも無理はないだろう。
「甚だ不本意なのですがぁ……同意するのですよぉ」
なにせ、『六重術者』たるフィールすら疲弊しているのだ。むしろ、よく頑張ったと讃えるべきだろう。
「ですがぁ、シグさんが負けたら、私たち……」
「はいぃ…空さまの所有物になってしまうんですよねえ……」
それだけは嫌だ、と。フィールとプラムは揃って零し、フィールドへ目を落とす。
シグよ負けるな、と────それだけを祈って。
一方、フィールド内。
こちらでは、絶え間なく銃声が響いていた。
「シ〜グさ〜んこっちら♪銃声鳴る方へッ♪」
……何と言えばいいだろう。空のこの様子……なんと例えよう。
シグの気迫に押されチャンスを逃した空は、だが二つの事象に気付いてしまった。即ち────
ビビらず撃ってりゃ勝てたじゃん、という盛大なるミスと。
誰の妹撃ってくれてんだテメエ、という壮大なる怒りに。
斯くて、怒り狂って壊れた空は、エアガンを上方に構え、乱射しながら練り歩いていた。
「…おいおい、大丈夫かよ」
その様子に、シグは対戦中でありながら空の心配を始めた。常に相手に自分の位置を教えながらゆっくり歩くなど、悪手以外の何物でもない。
────だが。哀れみにも似た感情を垣間見せるシグの目が、徐々に陰りを見せ始める。
「────そもそも、俺のせいじゃねえか。くそっ────」
────仮面が剥がれかけている。シグはそう自覚する事さえ出来なかった。
発作のように、シグの仮面が軋む。その足が、震え始める。
────胸が焼けるように痛い。呼吸さえつらい。何とも例えようのない喪失感が、胃に落ちるような感覚がする。
ポロポロと崩れる仮面は、もう少年の心を止めることは出来ない。溢れそうになった罪悪感が、少年の膝を折ろうとする────
だが。
「落ち着い、て…?」
そっと頬に添えられた手に、その心が止められる。
「な……白?何で────」
白。『 』の片翼。それが何故、敵の俺を助ける?そう、シグの頭は疑問符に埋めつくされる。
だが、答える気はないと。そう言うように、白は流し目で端的に告げた。
「自分を、責める必要、無い……どうせ、勝つの、『 』」
「……ハ。ハハ、ハハハハハ────!!」
ともすれば挑発行為と捉えられてもおかしくない────否、普通なら挑発行為としか思えない行為。だがシグは白の言葉に、確かな慈悲を感じて。
シグは笑った。仮面に入ったヒビは、もう無かった
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ