第一章
第11話 卒業
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
孤児院に入って、半年が経った。
あっという間だった。
元の日本では、失踪事件として扱われていると思われる。
行方不明者の捜索にいつまでも人員を割けるわけではないと思うので、警察はもうまともに捜索をしていないかもしれない。家族もさすがに諦めていると思う。
時期的には入社式を過ぎている。内定は間違いなく取り消されていると思う。
残念だが、こうなってしまった以上は仕方がない。無事に帰れたら改めて就職先を探すことになるだろう。
この半年間の生活――
孤児院の子供たちとは、ここまでうまくやってきたと思う。
変人ばかりではあるが、純粋で、根は優しく、いわゆる「良い子」たちだ。
全員が金色の雲に乗れそうだと思った。
俺は某悪役が乗った黒い雲にしか乗れないだろうけど。
午前中は、ずっと自分のワープ事故の件で役に立つであろう情報を収集してきた。
全土地図作成のヤマガタという男に付いて回っていた「怪しげな協力者」については、名前もまだ突き止められていない。
しかし、町の有識者の話では、ヤマガタ家はまだ地図職人の家として存在しており、首都に行けば直系の子孫に会えるかもしれないとのことだった。
そろそろ、この町での調査はやり尽くしつつあると思う。これ以上新しい情報が手に入る可能性は低くなっている。
午後は、院内の授業を子供たちに混じって受けてきた。
内容はこの国の歴史や、読み書き、算術などである。
どの授業も真剣に聞いたつもりではあったが、特に『歴史』は重要だと思っていたので、かじりつくように話を聞いた。
この国の歴史についてはまったく知らないわけで、それを知ることは、元の世界に戻るための大きなヒントになるかもしれないからだ。
なお、勉強してきたその歴史の内容については――。
突っ込みどころが大いにあった。
不思議なことに、千年前の時点で現在に近い文明レベルがあったことになっている。
それならば、もっと前の歴史から教えてもよいのではないか? と思った。
それを指摘すると、『ボリュームが増え過ぎてしまう』ことと、『一次資料が消失しており言い伝えの域を出ない』という二つの理由で、正史として教える予定は今後もないとのことだ。
俺のいた日本が神話時代を教えないことと同じようなものなのだろうか。
空いている時間で教わっていた剣術と体術については、カイルいわく「順調」らしい。
何度か様子を見に来た町長も「まあまあ」という総評をしていた。
剣術については、剣道の癖のマズい部分だけを矯正していく感じで教わっていた。
体術のほうはゼロから習うかたちとなったので、受け身の練習からやっていた。
どれだけ身についたのかは謎であるが
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ