STAGE3-3:模犯怪盗の向こう側へ
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は……ラディはだんだん僕のことを避けてるんじゃないかって……嫌いになってるんじゃないかって、不安だった。だから……君に『模犯怪盗』を否定されてしまうんじゃないかって……本気で、邪魔をしてしまった。妹みたいに思ってる、なんて僕に言う資格なんてなかったよね……」
「そんなことない!」
ラディが叫ぶ。喉だけでなく全身を震わせて。
「だって……私だって、私のことなのに自分がどうしたいのかわからなかった!一緒にいたい、あなたみたいになりたい、でもそれを伝えたら……今のヒーローをやめたらクルルクとの日々も終わりになるんじゃないかって……嫌われちゃうんじゃないかって……人前で女の子らしくしようとしたって、笑われるだけなんじゃないかって……いろんな気持ちがぐちゃぐちゃになって、何もわからなくなってた!」
瞳に涙を浮かべて、絞り出すように叫ぶ。
「だから……クルルクは悪くない。私自身にもわからなかった心が、クルルクにわかるはずがないんだから」
「……ありがとう」
クルルクは部屋のモニターに写るスズの方に向き直り、頭を下げる。
「スズ、勝負はついた。約束通り……ラディの願いを叶えてあげて」
「了解です。……あなたも、納得してくれたようで何よりです。正直のところ、勝ち負け以上にラディがどうありたいか気づけるか、あなたがラディの心境の変化を理解してもらえるかが不安でしたから」
人間の感情はままなりませんからねえ、と呟くスズに二人は笑った。なんだかとても久しぶりに、一緒に笑えたような気がした。
「ではラディ、スズはポケモンファクトリーの管理者として約束どおりあなたがメレメレの島キャプテンを辞めることを認めます。……その上で、どうしたいですか? 人前に立つのをやめ、ポケモンバトルの世界から離れ普通の女の子に戻ってもいいですし、あなたが今後もポケモンバトルを続けたいというのであれば、できる範囲で叶えましょう」
「えっと……わたしは……ッ」
「あ、息は整えてからで結構です。どうせ一年待ったことですし、存分に落ち着いてくださいな」
ラディは言われるまま、ゆっくりと深呼吸をする。爆発した感情が収まるのに、たっぷり十五分はかかったが。その間クルルクは勿論、スズも、一言も口を開くことはなかった。
「私は……クルルクに並べるような人になりたい。私らしく、彼のような『怪盗』になりたい……今なら、そうだってわかる」
ゆっくりと、ラディがスズにこうありたいと告げる。
「では……クルルクと共に、これからは二人一組の『模犯怪盗』となりますか?クルルクがそれでいいというならですが」
「……僕は勿論それでも構わないよ。ラディと一緒に夜の退屈を盗むのは、とても楽しそうだしね」
二人はそれを、肯定はしても決定はしない。
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