STAGE3-3:模犯怪盗の向こう側へ
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抜けたように、すり抜けた。
ロックブラストを躱す際に使用した『影分身』が、敗北必至の一撃を覆す。
そして初撃さえ躱してしまえば。トリックルームの効果さえなくなってしまえば。
水タイプのグソクムシャと電気タイプのライチュウの相性差は明らかで──
ラディの表情に、微かな笑みが浮かぶ。
「今よレイ!『トリックルーム』!」
クルルクは今を好機とグソクムシャを倒すはず、その隙にもう一度発動しなおしてしまえば今度こそ負けはない。目に見えた必勝の一撃をクルルクは必ず回避してくる。模犯怪盗である彼を信頼したが故の罠。
天井からグソクムシャに突撃を仕掛けようとしていたライチュウにそれを止める術は最早ない。が。
クルルクの顔に、勝利を確信した笑みが浮かぶ。
「これが君の戦術への本当の【模犯怪盗】だ。『スピードスワップ』!!」
「『スピードスワップ』……?」
「効果は単純、フィールドにいる二体の素早さを入れ替える! 僕が入れ替えるのはライアーとツンデツンデ……この二体の素早さが逆転する!」
ラディが今まで見たことがない技、クルルクが一度も実戦で使ったことのない技だ。それも当然。滅多に速度で負けないアローラのライチュウが、自分の素早さと相手の素早さを入れ替える技を使う理由など本来皆無と言っていいからだ。
だがこの時この場所、ラディが初めて『トリックルーム』による戦術を使った状況において。
最速のライチュウと最遅のツンデツンデの素早さが入れ替わることの意味は甚大だった。
それはもう、絶対に覆せないほどの速度差がついたということで──
「これで僕の勝ちだラディ!『放電』!」
ライチュウが力を溜める。
頬袋と尾に電気が溜まっていき、元々黄色いその体が金色に染まっていき。
大きく伸びをして、溜め込んだ電撃全てを放とうとする、その動きは。
コマ送りのスローモーションビデオのように、異常なまでに遅かった。
「え……?」
「……やっぱり、クルルクはすごいね。あんな状況からでも、怪盗も、回答もできる……初めて会った時から、ずっと憧れだった」
クルルクに、ラディがほほ笑む。だがおかしい。ツンデツンデとライチュウの速度を入れ替えたうえで『トリックルーム』が発動していれば今こうしてしゃべる間もなくライチュウの電撃は二体を撃ち抜くはずなのに。
「クルルクなら、私のどんな作戦も、罠も、見透かせるって信じてた。だから……」
ツンデツンデがキューブ状の体をバラバラに分裂させ、無数のブロックとなってライチュウの真上に滞空する。それが自分の体を降り注がせるツンデツンデ特有の『いわなだれ』だとクルルクには看破できる。だが肝心のライチュウはツンデツンデ本来の遅さにとらわれて動けない。
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