暁 〜小説投稿サイト〜
人類種の天敵が一年戦争に介入しました
第10話
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
とは桁違いだ。近距離戦闘を志向するザクとは違い、本来であれば、ザクが気付かぬほどの遠距離攻撃が可能なのだ。突っ立っている今はなおさら良い的である。それを考えれば、内心はどうであれ表面的には平然と雑談を続けていられるマ・クベの胆力は尊敬に値する。
 もっとも、マ・クベも内心では焦りに焦っている。部下達とは違う意味で、だが。やがて雑談は、マ・クベにとっての本題を迎えた。

「そう言えば、昨日は連邦軍相手にずいぶんと活躍したようだが」
「うん」
「こういうことを面と向かって協力者に言うのは心苦しいが、戦果確認が曖昧なのでな、この件については報酬が低くなると覚えておいてくれ」
「いや、あれはたまたまかち合っただけで、こちらが勝手にやったことだからねぇ。降下支援とは関係ないし、無報酬で良いよ」

 ずいぶんと太っ腹なことを言う野良犬だが、肝はそこにはない。この次が正念場なのだ。

「だが、貴様は無事のようだがリリアナにも損害は出たのだろう? 相手は軍団規模と聞いているが」

 野良犬の仲間の死を残念がるように演じるマ・クベに対し、野良犬は苦笑しながらあっさりと答えた。

「私は単独行動だから損害ゼロだよ。さっきも言ったけど」
「……そうか。それは良かった、と言っておくか」

 口調こそ然り気無いものだったが、操縦悍に置いたマ・クベの手は震えていた。野良犬が嘘をついていないとわかったからだ。
 話をしてみてわかった。いや、最初に通信したときに確信していたではないか。野良犬は子供だと。子供であることと嘘をつかないことはイコールではないが、ここで言う子供とは、人間性が幼いという意味もあるが、どちらかというと未熟という意味が強い。野良犬は相手を撹乱したり自分に都合が良いように、さらりと嘘をつけるような人間ではない。
 そんな嘘をつけない野良犬は、片言でなんと言っていたか。戦うときはいつも一人と言ってはいなかったか。つまりオデッサを攻略したときも、オデッサの市街地を焼き払ったときも、セバストポリを攻略したときも、ノボロシスクを攻略したときも、連邦軍三個師団を皆殺しにしたときも、ウィーンを更地にしたときも、野良犬一人。たった一人。
 たった一人ですべて叩き潰してきたのだ。信じがたいことではあるが、野良犬の反応は嘘をついている人間のものではない。
 中将たるマ・クベの下には、都市の人口に匹敵するだけの人員がいる。その全てをマ・クベが直接管理するのは不可能なので、要所に心利いた部下を配置するのが……配置するのも、マ・クベの役割ではない。組織人たるマ・クベの役割とは、ぎりぎり現場に関与できる範囲で言うなら部下を選ぶ部下を選ぶことである。意味不明寸前の表現になっているが、事実そうなのだから仕方ない。本来なら机の前こそが彼の戦場であり、直接現場に関
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ