巻ノ百五十二 迎えに向かう者達その十二
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「それではその時は」
「宴を開いてくれるか」
「内密ですが」
「やはりそこはか」
「はい、右大臣様も真田殿達もです」
誰もがというのだ。
「天下においては死んだことになっていますので」
「死人は飯も酒も口にせぬからな」
「この世にあるものは」
「だからであるな」
「内密にです」
密かにというのだ。
「そうします」
「わかった。ではな」
「その様にして」
「あの者達を迎えよう」
「それでは、それとですが」
家久は秀頼にこうしたことも話した。
「今日星見の者が言っていましたが」
「何とじゃ」
「大御所様は敗れますが」
幸村との戦、それにというのだ。
「まだお亡くなりにはです」
「ならぬとか」
「はい、出ているとか」
星にはというのだ。
「確かにお亡くなりになる時は近いですが」
「それでもか」
「今の戦では」
「真田達が勝ってもか」
「その様に出ています。妙なことに」
「いや、妙なことではあるまい」
家久は怪訝な顔になったが秀頼はその家久に落ち着いた顔で答えた。
「そのことは」
「当然のことだと」
「うむ、あの者達は戦に勝つことを考えておるな」
「はい」
その通りだとだ、家久もこのことは答えられた。
「だからこそ駿府に行かれました」
「そうじゃな、しかしな」
「それでもですか」
「戦は相手を退けても戦えなくしても勝ちであろう」
「では総大将の首を取らずとも」
「それでもじゃ」
まさにというのだ。
「勝ちであるからな」
「それで、ですか」
「真田は勝つ、しかしな」
「大御所様の御首を取らず」
「戻るのであろう」
「真田殿は大御所様を恨んではおられぬのですな」
「うむ、実はな」
幸村、彼はというのだ。
「お互いにじゃ」
「嫌い合ってはおらぬのですか」
「余にしても同じじゃ」
かく言う秀頼もというのだ。
「今も大御所様はな」
「決してですか」
「嫌いではない」
そうだというのだ。
「今もな」
「そして真田殿も」
「大御所様には勝たれるが」
「お命は奪わずに」
「そうして帰ってくる」
「言われてみますと。大御所様はあと少しですが」
「まだやられるべきことがあろう」
秀頼もわかっていた、このことが。
「最後の最後にな」
「天下に諸法度を定められてますし」
「それは間もなく終わる、後はな」
「後はですか」
「江戸の北東、鬼門にな」
その方角にというのだ。
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